厳家淦故居とは? わかりやすく解説

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厳家淦故居

(厳家淦先生故居 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/18 09:10 UTC 版)

厳家淦故居
中華民国 文化資産

種類 宅第
等級 国定古蹟
文化資産登録
公告時期
2002年1月23日
位置 台北市中正区重慶南路二段4号
建設年代 1900年
所有者 文化部文化資産局
詳細登録資料

厳家淦故居(げんかかんこきょ、: 嚴家淦故居)は、中華民国台北市中正区に所在する、第2代総統厳家淦が邸宅として使用していた建築物である。日本統治時代1900年明治33年)に台湾銀行頭取の公邸として建設されたものであり、中華民国の国定古蹟に指定されている[1][2]

施設の概要

総統府などの中央政府官庁が密集している博愛特区に位置し、常に厳重な管理下に置かれていた[3]。建坪は200以上、敷地面積は843.73坪である[4][5]。尖塔を有する2階建ての洋風建築を主体とし、1920年大正9年)には隣接して木造の日本家屋が増築された[1][2][5][6][7][8]。1階は応接間食堂和室、2階は書斎寝室居間から成る[9]。邸宅の設計者は不明だが、中央研究院台湾史研究所中国語版の黄蘭翔は、台湾総督官邸(現:台北賓館)や朝鮮総督府庁舎を手掛けた野村一郎が設計者ではないかと推測している[10]

居間の再現展示(2013年12月、国立国父紀念館にて)
書斎の再現展示(2013年12月、国立国父紀念館にて)

調度品は厳家淦が暮らしていた当時の状態のまま保存されており、音響機器テープレコーダー16mmカメラパーソナルコンピュータアメリカ大統領リチャード・ニクソンから贈られた灰皿、厳家淦が故郷の蘇州から持ってきた食器などが残されている[5][9][11]

の樹木は日本統治時代に植えられたもので、アラカシシマサルスベリガジュマルフウなど、ほとんどが台湾の在来種である[1][12]

厳家淦故居に隣接する大同之家中国語版は、かつて厳家淦が仕事場・貴賓室として使用していた施設である[7]

至近距離に位置する中華民国総統官邸の警備上の理由から、厳家淦故居は基本的に一般開放されておらず、特別に開放するイベントを行う場合でも警察の許可が必要である[6]

沿革

厳家淦邸として

1945年昭和20年/民国34年)に台湾省行政長官公署の役人として一家で台湾に移住した厳家淦は、翌1946年に台湾銀行の董事長に就任し、この邸宅に居を構えた[13]。厳家淦が1966年(民国55年)の選挙副総統に選出されると、彼はこの邸宅を台湾銀行から買い取って総統府の管轄とした[13]。当時の総統府の公的文書では、厳家淦邸は重慶寓所と呼ばれていた[8]

総統退任後の1986年(民国75年)9月、厳家淦は脳出血に倒れて寝たきりとなり、1993年(民国82年)12月24日に死去するまで台北栄民総医院に入院し続けた[14]1999年(民国88年)12月24日、奇しくも厳家淦の死から丁度6年後に当たる日、厳家淦の妻である劉期純中国語版は重慶寓所にて死去した[15]

国定古蹟への指定

厳家淦の四男である厳雋泰は留学から帰国して結婚した後、重慶寓所を再び住処としていた[16]2000年(民国89年)3月21日、総統府第三局の職員が厳雋泰を訪ね、「元総統の未亡人たる劉期純が死去したため官舎を借用し続ける理由が消失した」という理由から、法律に基づいて4月30日までに重慶寓所を明け渡すよう通告した[13]。偶然これを知った民主進歩党(民進党)所属の立法委員である范巽緑中国語版は、複数の文化・建築学者と共に厳家淦故居を訪問した。この時、伝統建築の専門家である李乾朗中国語版は「厳家淦故居は台北市に現存する日本統治時代の官舎の中でも優れたものであり、国定古蹟中国語版に値するであろう」と指摘した[3]4月6日台北市政府中国語版文化局長の龍應台は専門家を招集して会議を開き、4月18日、厳家淦故居を市定古蹟に指定することが満場一致で決定した[4][17]

2001年(民国90年)7月17日内政部国定古蹟審査会は厳家淦故居を国定古蹟に指定することを承認した[18]。翌2002年(民国91年)1月23日、厳家淦故居は正式に国定古蹟に指定された[2]

2004年(民国93年)11月7日、厳家淦の生誕100年を記念し、陳水扁総統の指示の下、厳家淦故居にて総統府主催の文物展が開催された[19]

脚注

  1. ^ a b c 嚴家淦故居” (中国語). 財政部. 2025年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月27日閲覧。
  2. ^ a b c 國定古蹟嚴家淦故居” (中国語). 文化部文化資産局. 2025年2月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2025年2月27日閲覧。
  3. ^ a b 周美惠、何振忠 (2000年4月1日). “嚴家淦故居籲提報古蹟” (中国語). 聯合報 
  4. ^ a b 王蘭芬 (2000年4月1日). “留住歷史 保存嚴家淦故居” (中国語). 民生報 
  5. ^ a b c 謝素娟 (2001年9月6日). “小檔案 嚴家淦故居 房齡85載 和洋並存” (中国語). 聯合晚報 
  6. ^ a b 鍾泓良 (2017年6月15日). “嚴家淦紀念園區 住宅區變更為保存區” (中国語). 自由時報. オリジナルの2021年6月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210608233357/https://news.ltn.com.tw/news/life/breakingnews/2101658 2021年6月9日閲覧。 
  7. ^ a b 郭美瑜 (2006年4月29日). “國定古蹟嚴家淦故居 嚴家淦先生寄予深情” (中国語). 中央日報 
  8. ^ a b 劉慶侯 (2020年1月31日). “國定古蹟嚴家淦故居今晨火警 配電盤冒煙未波及主建築” (中国語). 自由時報. オリジナルの2021年6月8日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210608232558/https://news.ltn.com.tw/news/society/breakingnews/3053188 2021年6月9日閲覧。 
  9. ^ a b 邵冰如 (2000年3月31日). “百年老屋處處寶貝” (中国語). 聯合晚報 
  10. ^ 潘彥妃 (2000年4月7日). “與台灣戰後社經發展關係密切 日式建物再獲肯定” (中国語). 聯合報 
  11. ^ 周美惠 (2005年7月14日). “你不知道的嚴前總統…攝動人心 生前最愛攝影 拍過八厘米、十六厘米 百歲冥誕前夕 作品將與兒子、媳婦畫作展出” (中国語). 聯合報 
  12. ^ 陳盈珊 (2000年9月26日). “樹口普查 日式宿舍尋寶 第一站會勘嚴家淦故居 發現許多原生種珍貴植物” (中国語). 中國時報 
  13. ^ a b c 邵冰如 (2000年3月31日). “被迫下月搬家 嚴家淦遺物可能運往大陸 嚴家的無奈 擬將故居改成文物紀念館 大選後突遭否決 嚴家的掙扎 面對台灣無心 蘇州卻相對一頭熱爭取 數千件文物可能根落大陸” (中国語). 聯合晚報 
  14. ^ 張慧英 (1994年1月25日). “總統府盼速修訂卸任總統禮遇條例” (中国語). 中國時報 
  15. ^ 蕭衡倩 (1999年12月25日). “嚴家淦夫人病逝 享壽92 李總統聞訊致意 嚴家淦夫妻相隔六年同一天病逝於台北榮總” (中国語). 聯合晚報 
  16. ^ 謝錦芳、何榮幸、黃哲斌、高有智 (2008年11月30日). “嚴家淦教嚴雋泰「無聲勝有聲」” (中国語). 中國時報 
  17. ^ 潘彥妃 (2000年4月19日). “嚴家淦故居及大同之家 北市府通過為市定古蹟” (中国語). 聯合報 
  18. ^ 楊羽雯 (2001年7月18日). “嚴家淦故居審定為國定古蹟” (中国語). 聯合報 
  19. ^ 李濠仲 (2004年9月26日). “嚴家淦百歲冥誕 扁囑辦文物展 指示幕僚不需轟轟烈烈 但一定要溫馨 由總統府主導辦系列活動 蘇貞昌強調這是好事 不要被意識形態惡化了” (中国語). 聯合晚報 

関連項目




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