北アナトリア断層
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北アナトリア断層(きたアナトリアだんそう、トルコ語:Kuzey Anadolu Fay Hattı)とは、約1000 kmにわたってトルコ北部を東西に貫くトランスフォーム断層である。その動き方から、より詳しくは「右横ずれ断層」に分類される。地球規模で見ても特に活動が活発な活断層の1つとして知られる。
概要
   北アナトリア断層(黄線)
プレートテクトニクス理論の考え方および、GPSのデータを基にした観測では、ヨーロッパから東アジアまでを覆う巨大なユーラシアプレートと、アナトリア半島(小アジア)を覆う小さなアナトリアプレートの境界に存在するトランスフォーム断層が、北アナトリア断層である[1]。両プレートのずれを反映しており、断層の北側は東に、南側は西に動き続けている。
北アナトリア断層はイスタンブールに最も近い場所で、南に約20 kmしか離れていない。またイズミットやエルズィンジャンでは街の真下に、この断層が走っていると考えられており、防災上重要な断層である。この断層では過去に多数の大地震が起きたものの、総延長が約1000 kmと非常に長い北アナトリア断層全体が同時に動いた地震は、知られていない。基本的には、数年に1回程度の頻度で、少しずつ震源域が、この断層に沿って移動しつつ、大地震を発生させてきた。
北アナトリア断層は、エルズィンジャン付近で北西アナトリア断層と接する。また、アルメニアとトルコの国境付近で東アナトリア断層と接する。トルコ中部のチョルム県付近ではAlaca断層と接し、北西部のサカリヤ県付近ではGeyve断層と接する。
活動記録
   過去に北アナトリア断層で発生した大地震のうち、記録に残っている地震は以下の通りである。
※表記は左から順に「発生年月日」「震源・被害地域」「マグニチュード」。
- 紀元前282年、リシマキア付近、M6.7
 - 121年、ニコメディア・ニカイア付近、M7.4
 - 170年、Kyzikos付近、M7
 - 358年8月24日、ニコメディア付近、M7.8
 - 362年12月2日、ニコメディア・ニカイア付近、M6.8
 - 368年10月11日、Persis・ニカイア付近、M6.8
 - 437年9月25日、イスタンブール付近、M6.8
 - 447年11月6日〜8日、イスタンブール・ニコメディア付近、M7.2〜7.3
 - 460年、Cyzicus付近、M6.9
 - 478年9月25日、Helenopolis・イスタンブール付近、M7.3
 - 480年9月25日、ガリポリ付近、M6.8
 - 484年、Callopolis付近、M7.2
 - 541年8月16日、イスタンブール付近、M6.6
 - 543年9月6日、Cycicus付近、M6.8
 - 554年8月16日、イスタンブール・ニコメディア付近、M6.8〜7.6
 - 557年12月24日、イスタンブール付近、M7.2
 - 740年10月26日、イスタンブール・イズミット付近、M7.1
 - 802年、エルズィンジャン付近、M6.5
 - 860年5月23日、マルマラ海付近、M6.8
 - 865年5月16日、イスタンブール付近、M6.7
 - 869年1月9日、マルマラ海付近、M7
 - 967年6月2日、ボル付近、M7.2
 - 989年10月25日、マルマラ海付近、M7.2
 - 995年12月、トゥンジェリ付近、M7
 - 1010年1月8日、Callipoli付近、M7.4
 - 1011年、エルズィンジャン付近、M6.5
 - 1046年7月8日、エルズィンジャン付近、M7.3
 - 1063年9月23日、Panio付近、M7.4
 - 1087年12月6日、イスタンブール付近、M6.5
 - 1168年、エルズィンジャン付近、M6
 - 1254年、エルズィンジャン西方、M7.2?
 - 1296年6月1日、ビテュニア付近、M7
 - 1343年10月18日、Ganos・Heraclea(Marmara Ereğli)付近、M6.9〜7
 - 1354年3月1日、Hexamili付近、M7.4
 - 1419年3月15日、ブルサ付近、M7.2
 - 1458年、エルズィンジャン・エルズルム付近、M7.6
 - 1481年〜1482年、エルズィンジャン・エルズルム付近、M7.5〜7.7
 - 1509年9月10日、マルマラ海・イスタンブール付近、M7.2〜7.4
 - 1556年4月10日〜5月10日、マルマラ海沿岸、M7.1
 - 1584年6月17日、エルズィンジャン付近、M6.6
 - 1668年8月17日、ボル〜エルズィンジャン付近、M8(北部アナトリア大地震 (1668年))
 - 1685年11月22日、Gonek付近、M6.7
 - 1705年1月27日、ビトリス付近、M6.7
 - 1719年5月25日、イスタンブール・イズミット付近、M7.4(イズミット地震(1719年))
 - 1766年
 - 1784年7月18日、エルズィンジャン・エルズルム付近、M7.6
 - 1789年5月29日、Palu付近、M7
 - 1855年2月28日・4月11日、ブルサ付近、M7.1
 - 1859年8月21日、サロス付近、M6.8
 - 1863年11月6日、Umurbey付近、M6.7
 - 1866年 
    
- 5月12日、Gonek付近、M7.2
 - 6月20日、Kulp付近、M6.8
 
 - 1875年10月、Canakkale付近、M6.7
 - 1877年10月13日〜11月1日、マルマラ諸島付近、M6.1・群発地震
 - 1878年4月19日、マルマラ海東部・イズミット付近、M6.7
 - 1881年9月28日、チャンクル付近、M6.1
 - 1890年5月20日、Kayi・Refahie付近、M7.3
 - 1893年2月9日、サロス付近、M6.9
 - 1894年7月10日、イスタンブール・イズミット付近、M6.7〜7.3
 - 1905年4月15日、ブルサ付近、M6.5
 - 1909年2月9日、Enderes付近、M6.3
 - 1912年8月9日、サロス・マルマラ海西部付近、M7.4(同年9月13日にM6.8の余震)
 - 1916年1月24日、サムスン・トカット付近、M7.1
 - 1929年5月18日、Suşehri付近、M6.4
 - 1935年1月4日、マルマラ諸島付近、M6.4
 - 1939年12月26日、エルズィンジャン付近、M7.8
 - 1942年12月20日、Erbaa付近、M6.9
 - 1943年 
    
- 6月20日、アドパザリ付近、M6.3
 - 11月26日、Tosya付近、M7.6
 
 - 1944年2月1日、Gerede付近、M7.6
 - 1949年8月17日、Karlıova付近、M6.9
 - 1951年8月13日、Kurşunlu、M6.5
 - 1957年5月26日、Abant付近、M6.8
 - 1966年8月19日、Varto付近、M6.9
 - 1967年7月22日、Mudurnu付近、M7.0
 - 1971年5月22日、Bingöl付近、M6.8
 - 1992年3月13日、エルズィンジャン付近、M6.5
 - 1999年 
    
- 8月17日、イズミット付近、M7.4(イズミット地震(1999年))
 - 11月12日、デュズジェ付近、M7.2
 
 
脚注
- ^ 遠田晋次『活断層地震はどこまで予測できるか』講談社、2016年、209頁。ISBN 978-4-06-257995-7。
 
出典
- 世界の被害地震の表(古代から2004まで)
 - Stress transfer theory and earthquake prediction on the North Anatolian Fault Steven Earle, 2000, Earth Science News.
 
関連項目
- サンアンドレアス断層 - プレート境界に存在する大規模なトランスフォーム断層として有名だが、こちらは海洋プレートと大陸プレートとの間に存在する。
 - 中央構造線
 
- 北部アナトリア断層のページへのリンク