包括的利用許諾契約の運用問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/01 05:04 UTC 版)
「日本音楽著作権協会」の記事における「包括的利用許諾契約の運用問題」の解説
JASRACは非営利目的の運営が法律により定められている一般社団法人だが、スナックやジャズ喫茶、ライブハウスなどでJASRAC管理曲を演奏する場合の使用料負担が重過ぎるとの批判がある。JASRACは包括的利用許諾契約締結を求めているが、包括的利用許諾契約は演奏回数ではなく店舗の客席数や床面積に応じて一律に演奏使用料が決定されるため、JASRAC管理曲の利用頻度が低い店舗は使用料の負担比率が高まり不評である。飲食店等には演奏曲目を記載した演奏利用明細書の提出を原則求めておらず、演奏楽曲権利者への確実な分配が危惧されるほかに、使用料の支払者に対し権利者への配分情報が開示されていないなどの批判もある。 包括的利用許諾契約は、他著作権管理事業者との公正競争を阻害するとの指摘もある。JASRAC管理曲を放送する場合に放送事業者は包括的利用許諾契約か個別契約のいずれかを選択し、包括契約では放送事業収入の1.5パーセントをJASRACに支払えば、管理曲を無制限に放送可能であるため、管理曲を大量に放送する事業者は、包括的契約が一般的で他事業者の参入が困難になると公正取引委員会は判断した。包括契約問題で指摘されたのは、大塚愛の『恋愛写真』の放送局での取り扱いだった。 ウィキニュースに関連記事があります。日本音楽著作権協会への立入り調査、独占禁止法違反の疑いで - 公正取引委員会 2008年4月23日に、公正取引委員会はJASRACへ立ち入り調査し、2009年2月27日に独占禁止法違反を認定して、排除措置を命令したが、2009年7月9日に東京高等裁判所は、JASRACによる執行免除の申し立てを認め、8月6日にJASRACは保証金1億円を一括で供託し、命令確定まで執行停止された。 排除命令に対してJASRACは審判を申立て、2012年6月12日に公正取引委員会は排除命令を取り消す審判を行った。これに対してイーライセンスが申し立てた審決取消し訴訟で、2013年11月1日に東京高等裁判所の飯村敏明裁判長はこの審決の認定は実質的証拠に基づかないものでありその判断にも誤りがあるとして審決を取り消した。11月13日にJASRACは上告し、「イーライセンス対公正取引委員会の裁判に訴訟の結果により権利を害される第三者」(行政事件訴訟法22条1項)として訴訟に参加した。 2015年4月28日に、最高裁判所は公正取引委員会の上告を棄却し、JASRACが新規参入を著しく妨げているイーライセンスの訴えを高裁判決が認めた判決が確定判決となり、公正取引委員会は審決を取り消され、従前の排除措置命令が復活した。 2016年2月、イーライセンスとJRCが合併した新会社であるNexToneが、JASRACに対する損害賠償等請求訴訟を取り下げた。 2016年9月9日、JASRACが公正取引委員会への審判請求を取り下げたため、公正取引委員会の審判は終結し、2009年2月27日に出された『JASRACに対する排除措置命令』が確定し、2015年(平成27年)4月1日から遡及適用された。
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