分子活性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 00:33 UTC 版)
アフリカツメガエル卵から精製されたコンデンシン I は、ATP加水分解活性をもち、その活性は DNA への結合によって促進される。さらに重要なことに、ATP加水分解に依存して 2重鎖DNA に正のねじれを導入することができる(この活性は、正のDNA超らせん化活性、あるいはポジティブ・スーパーコイリング [positive supercoiling] 活性と呼ばれることも多いが、コンデンシンはDNAを切断・再結合することはできないので、いわゆるトポイソメラーゼ活性とは異なることに注意したい)。また、この活性は、Cdk1キナーゼを介したリン酸化によって分裂期特異的に促進されることから、分裂期の染色体凝縮に直接関与する本質的な反応のひとつであると考えられている。コンデンシンは、この活性を通してDNAの折り畳みに関与するとともに、II 型トポイソメラーゼによる姉妹染色分体の分割と分離を促進しているのかもしれない。一方、単分子DNA操作技術を用いると、コンデンシンがATPの加水分解に依存してDNAを凝縮させることをリアルタイムで観察することも可能である。また最近になって、出芽酵母のコンデンシン I が、ATP加水分解に依存して2重鎖DNA上を移動するモーター様活性を持つこと、DNAを「押し出して」ループを形成する(loop extrusion)活性を持つことが相次いで報告されている。これらの活性がスーパーコイリング活性とどのような関係にあるのかという問題は、今後の課題である。 コンデンシンはヌクレオソーム繊維に対してどのように作用するのであろうか?この問題についての解析は進んでおらず、いまだ仮説の域を出ていない。しかし最近になって、精製タンパク質を用いた染色分体の再構成系が報告されているので、この問題を解明するための糸口を提供してくれるだろう。この再構成系における染色体構築にはヒストンシャペロンFACTが必須であることが示されており、注目に値する。また驚くべきことに、カエル卵抽出液中ではヌクレオソーム形成を抑えた条件下においても、コンデンシンに依存して染色体に似た構造を作ることが可能である。この観察は、コンデンシンがヌクレオソーム構造を持たないDNAに対しても生理学的活性を有していることを示している。 コンデンシンの分子活性における個々のサブユニットの貢献についての情報は乏しい。SMC2量体(SMC2-SMC4)は、相補的な二本の1重鎖DNAを一本の2重鎖DNAに変換する活性(DNAリアニーリング)を有する。ただし、この反応はATPを要求しない。一方、真核細胞型に固有のHEATリピートサブユニットについては、DNA 結合活性を有するという報告およびダイナミックな染色体軸の構築制御に関与しているという報告がある。HEATリピートそのものが弾力性に富む構造を有していることは、真核細胞の染色体構造を考える上で大変興味深い。
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