生体分子活性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 03:08 UTC 版)
キラル分子のエナンチオマーは、アキラルな分子に対する反応性は全く同じだが、別なキラル分子との反応や、キラルな反応場下での反応(たとえば酵素反応)は反応性が異なる。この性質は有機合成においてエナンチオ選択性や不斉合成に応用される。機能性生体分子のほとんどはエナンチオマーを識別するので(基質選択性を参照のこと)、2つのエナンチオマーの生理活性は非常に異なるのが普通である。 アミノ酸や糖など生体分子の多くはキラルであり、原則として片方のエナンチオマーのみが使われている。非常に例外的に逆のエナンチオマーが使われている場合もある。地球上ではアミノ酸ではL体、糖ではD体が主流だが、このようなホモキラリティーが進化のいつの段階で生じたのかは化学進化上の未解決問題のひとつである。 キラル分子を用いた薬は、高いエナンチオマー純度が要求される。たとえば、サリドマイドを考えると、R体は睡眠薬や乗り物酔い止めとして有効な薬であるが、S体は催奇性を持っている。しかし、R体・S体を分離する(光学分割)することも可能だが、R体のみを服用しても比較的速やかに体内でS体に変化することがわかっている。このため、R体が催眠作用のみを持ち、S体のみが催奇性だけを現すという当初の一般薬理評価には近年疑問が持たれている。
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