分光観測での検出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/04/18 08:23 UTC 版)
太陽系外彗星の最初の検出報告は、1987年にパリ天体物理学研究所の天文学者R. Ferletらによって行われた。彼らは1984年から、テキサス州のマクドナルド天文台およびチリのラ・シヤ天文台を用いて、がか座β星の分光観測を行っていた。その結果、恒星のスペクトル中のカルシウムの吸収線の赤方偏移成分に、時間変動性のあるさらなる吸収が発生しているのを発見した。 検出された吸収スペクトルの変動の原因としては、(1) 純粋な恒星大気の変動によるもの、(2) 恒星表面のシェル状の領域での現象によるもの、(3) 恒星から遠く離れた距離にある塵のシェルに関連した現象 の3種類が考えられた。1つ目の説は、恒星の脈動によってスペクトルに変化が生じているというものである。しかしその場合、スペクトル線の赤方偏移側のみで変動が発生していなければならない理由はなく、完全には否定できないものの、観測された事象の原因である可能性は低いと考えられた。2番目の説はガス殻星で発生し得る現象であり、この場合はスペクトル線の赤方偏移側のみでの吸収が発生する場合がある。がか座β星で観測されたスペクトル線の赤方偏移成分は 40 km/s と遅く、これは恒星から脱出速度を下回る速度で噴出した物質が再び恒星に降着している所を観測したため、赤方偏移成分として検出されたと解釈することが出来る。ただしこの仮説は別のタイミングで物質が噴出している時の青方偏移成分が検出された場合は支持されるものの、青方偏移成分は検出されなかった。 3つ目の説は、恒星へと落下していく彗星のような天体によるとするものである。がか座β星の周囲には塵の円盤があることが分かっており、この円盤の内側にある彗星が恒星に向かって落下していると考えると、観測された特徴が最もよく説明できると結論付けられた。 がか座β星の周りの系外彗星の観測はその後も続けられ、2014年にはラ・シヤ天文台のHARPSを用いた観測で、周囲に多数存在する彗星は2つのグループに分けられるという研究結果が発表された。この研究では2003年から2011年にかけて行われた1000回以上の観測結果が用いられており、そのうち疑わしいデータを除いた493個の彗星候補天体の性質の統計的な分析を行った。その結果、浅い吸収線を示す系外彗星のグループと、深い吸収線を示すグループに分けられることが判明した。浅い吸収線を示すグループは古く揮発性物質が枯渇した彗星であり、重い惑星との平均運動共鳴に捕獲されていると考えられる。一方で深い吸収線を示すグループは、最近になって1個か複数の母天体が破壊されることによって生まれた破片からなる可能性があると考えられた。 その他の恒星も、がか座β星同様に恒星の吸収スペクトル線における時間変動性のある超過吸収を元に系外彗星の検出が報告されている。2番目に系外彗星の検出が報告された HR 10(英語版) も、がか座β星の周りの系外彗星の検出報告を行ったのと同じ観測グループによって1986年以降に観測されており、同様にスペクトル線の赤方偏移側に超過の吸収が存在することが1990年に報告された。
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