分光計本体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/03 17:45 UTC 版)
分光計本体は電磁パルスの発生とその照射のタイミングをコントロールしたり、プローブで検出した信号を増幅しスペクトルとして得る心臓部である。 電磁パルスのもととなる高周波電流は水晶振動子を用いた発振回路で作られる。水晶振動子の発振周波数は極めて安定しているため、これがすべての周波数の基準となる。この周波数を元に周波数シンセサイザにより観測対象核のラーモア周波数と位相を持つ高周波電流を作り出す。これをON/OFFゲートにより切り出して目的の長さのパルスとし、高周波アンプで所定の電圧まで増幅してプローブに送り込む。 NMRスペクトルにおいて必要な情報はラーモア周波数の絶対値ではなく、基準周波数との差のみである。FIDは基準周波数を搬送波としてそこに基準周波数との差の情報が乗っているものとみることができる。搬送波の周波数を別の周波数に変換してしまったとしても必要としている情報は失われない。そこで、プローブから送られてくるFIDをまず高周波アンプで増幅した後、基準周波数とある一定の差を持った高周波を作って混合してやることで、核によらない一定の中間周波数に変換する。これにより核種によらない信号処理が可能となる。中間周波数に変換された後は、さらに増幅され検波される。検波により搬送波に当たる中間周波数が除去され、基準周波数との差のみが取り出される。検波は位相敏感検波 (PSD) でなされる。1つのPSD検波では基準周波数との差の絶対値しか分からないため、2つの位相を90度ずらしたPSDを用いて検波を行う (QPD: Quadrature Phase Detection)。検波された信号はA/D変換器によりデジタルデータとしてメモリに蓄積される。 従来は複雑で高価で柔軟性に欠ける専用のハードウェアを使用していたが、近年ではソフトウェア無線 (SDR) で置き換える試みが進められる。
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