分光部
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/05 03:06 UTC 版)
FT-IR の分光部は、分光素子(プリズムや回折格子)の代わりに、主としてマイケルソン干渉計が用いられる。この干渉計は一枚のハーフミラーと二枚の反射鏡(固定鏡と移動鏡)より構成される。 干渉計に入射した光は、ハーフミラーによって反射光と透過光に分割される。一方の光は固定鏡で反射され、もう一方は移動鏡で反射されて、再びハーフミラーに戻り、合成されて検出器へと進行する。 ハーフミラーから2枚の反射鏡までの光路が等しい場合は、光の干渉は生じないため、強度は最大となる。一方、移動鏡が動いて光路に差が生じた場合、2つの反射光間で干渉が生じ、光の強度に変化が生じる。 簡単のため、光が単色(波長λ)とすると、光路差が波長の整数倍 (nλ) のとき干渉によって強めあい、光の強度は極大となる。一方、光路差が nλ + λ/2 となるとき、光の強度はゼロとなる。移動鏡を連続的に動かすと、検出器で観測される光の強度はサインカーブを描く。 実際の測定では光は連続光であるから、観測される光の強度は各波長の描くサインカーブの重ね合わせとなり、干渉パターン(インターフェログラム)は波束の形を示す。この干渉パターンを高速フーリエ変換 (FFT) することによって、各周波数成分を横軸としたスペクトルに変換できる。 この分光計では、FFT演算に堪えうる正確な干渉図形の測定を必要とするため、移動鏡の位置を精密に測定することが不可欠である。このため、He-Neレーザーを分光器内部に備え、赤外光のみならずレーザー光線の干渉図形も同時に測定されるように設計されている。この結果、波数ドメインのスペクトルに変換した後も、正確な横軸が再現性良く得られ、積算測定を理想的に行うことができる。すなわち、S/N比を大きく改善することができる。
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