写植文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/25 14:41 UTC 版)
文字サイズごとに一揃いの活字を用意しなければならなかった活版印刷では、一書体あたりの専有面積が大きく、管理する費用も嵩むため、利用できる書体の数はごく限られていた。これに対し写真植字では、一つの文字盤からあらゆるサイズの文字が出力できるため、より多くの種類の書体を利用することが可能になった。 また書体の開発においても、活字と比べて文字盤の製作は簡便であったため、日本で初めて欧文組版のように多彩な書体を用意することが可能になった。一方で、本文用に設計された文字を大きく拡大して使うと痩せて見えたり、逆に見出し用に設計された文字を縮小して使うと潰れてしまうことから、さまざまな太さ(ウェイト)を揃えたファミリーとしての書体が要求されるなど、金属活字の時代とは異なる課題も生じた。ウェイトという概念そのものは写真植字が登場する前から存在していたものの、日本では、一書体に必要な字数の多さなど開発にかかる負担が大きく、それまで実現していなかったものであり、日本のタイプフェイスデザインは、写真植字の時代に大きな発展を遂げた。 文字盤とそれに付随する書体は、各社の写真植字機を特徴づける大きな要素で、非常に高価であり、多くの場合メーカーは自社の文字盤を他社製写真植字機で使用できないよう図っていた。しかし、実際には別会社の書体を混植した印刷物も多く見られ、形状に互換性がなくとも、文字盤が小さければ位置を調整してそのまま用いたり、補助枠を取り付けたりして対応させ、逆に大きすぎる場合には文字盤そのものを加工するといった、様々な策がとられていた。さらに、文字盤の構造はそれほど複雑なものではなかったので、特異な書体を用いるために、私的に文字盤を製作することも行われた。また、会社ロゴや独自記号などを写植機上で使用できるようにするために、ネガフィルム状態の文字・図像を貼ることでサブプレートとして使用可能な、「四葉(しよう)」といったプレートも販売されていた。
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