再帰性と再犠牲者化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/25 14:24 UTC 版)
「ナラティブセラピー」の記事における「再帰性と再犠牲者化」の解説
クライエントは心的外傷を体験した者であるから、後遺症として、ふつうの健常人だったら何ら問題でないどころか、快い刺激に感じるかもしれない、日々の生活からやってくるさまざまな刺激を、自分を襲う刃のように感じている。それは自分に話しかけてくる人の声や姿、響いてくる電車の音、温かい太陽の光に至るまで、そういう可能性がある。 健常人が快く感じているこれらの刺激を、ASDやPTSDなどの外傷被害者も同じように快く感じていると、健常人が勝手に考えて、そういう社会の場へ引きずり出そうとすると、さらに症状を悪くするのみである。これは、再犠牲者化 (Revictimization) といい、外傷被害というものが本質的に再帰性という特徴を持っているからに他ならない。 近年、人道的にも社会的にも正しく聞こえる「ひきこもりを救え」といったスローガンのもとに、ひきこもり者などを無理やりひきこもっている場所から引きずり出し、社会へ押し出して様子を観察し、その「成功」の模様を報道するといった企画が、マスコミを初めとして各地で隆盛してきた。 ひきこもり者は自意識が強く、客体優位(自分がしたいことよりも、目の前の他人がしたいことを優先して行なってしまう行動障害・人間関係障害)の傾向を持っているので、他者の目(マスコミのカメラはその最たるものである)があるところでは一見、その企画によって「みごと、ひきこもりを脱した」かのように行動しおおせる。しかしその後、人々の目が去ったところで鬱的な症状を加速させたり、何の前触れもなく自殺してしまったりする。それは、この再犠牲者化、再帰性のためである。 また、そういった結末までは人々は観察しないし、マスコミも報道しない。あるいは「被験者のその後の自殺」そのものは報じることはあっても、その企画との因果関係は論じない。そのため、あたかも企画が人道的に成功であったような印象を大衆に与え、さらにそういう企画が増えていく。これもまた、逆の方向での再帰性である。
※この「再帰性と再犠牲者化」の解説は、「ナラティブセラピー」の解説の一部です。
「再帰性と再犠牲者化」を含む「ナラティブセラピー」の記事については、「ナラティブセラピー」の概要を参照ください。
- 再帰性と再犠牲者化のページへのリンク