円盤銀河の形成
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 23:24 UTC 版)
円盤銀河の主要な性質は、非常に薄く、高速に自転し、しばしば渦巻き構造を持つということである。この銀河の形成に関する説明の1つは、局所的に非常に多くの薄い円盤銀河が形成されたというものであるが、円盤は非常に壊れやすく、他の銀河と融合するとすぐに円盤が壊れてしまうというのが問題である。 1962年、オリン・エッゲン、ドナルド・リンデンベルとアラン・サンデージは、巨大な分子雲の崩壊によって円盤銀河ができるという理論を提案した。分子雲が崩壊すると、ガスは急速に回転する円盤状になる。トップダウン形成シナリオとして知られ、非常にシンプルであったが、初期宇宙の観測がボトムアップによる形成(小さな物体が集まって大きくなる)を強く示唆していたため、広くは受け入れられなかった。より小さな物体が集まって銀河を形成したという仮説は、 レオナルド・サールとロバート・ジンによって初めて提案された。 より最近の理論では、ボトムアップの過程で暗黒物質の銀河ハローが集まったというものがある。初期の銀河はほとんどがガスと暗黒物質でできており、恒星は少ししかなかった。小さな銀河を飲み込んで銀河の質量が増えてくると、暗黒物質の大部分は銀河の外側に集まるようになる。これは、暗黒物質は重力のみとしか相互作用できず、分散しないためである。しかし、ガスはすぐに相互作用して急速に回転し始め、非常に薄く回転の速い円盤になる。 現在でも、どのような過程で銀河の収縮が止まったのかは明らかになっていない。実際に、円盤銀河形成の理論は円盤銀河の回転速度や大きさについて説明できていない。新しくできた恒星からの放射や活動銀河核が円盤の収縮の速度を緩めたという説や、暗黒物質の銀河ハローが銀河を引っ張り収縮を止めたという説も提案されている。 近年、銀河の進化における銀河同士の融合について注目が集まっている。銀河系自身も、現在引き裂かれて銀河系に飲み込まれつつあるいて座矮小楕円銀河という小さな伴銀河を持っている。この種の出来事は、大きな銀河の進化の過程では良くあることだと考えられている。いて座矮小楕円銀河は、銀河系の円盤に対してほぼ直角に公転している。現在はちょうど円盤を横切っているところであり、恒星がはぎ取られて銀河系の銀河ハローになっている。このような融合は、新しいガス、恒星、暗黒物質を供給する。この過程の証拠は、銀河の歪みや流れとしてしばしば観測されている。 銀河形成に関するΛ-CDMモデルでは、宇宙の円盤銀河の数が過小に算出される。この理由は、これらの銀河形成モデルは多数の融合を予測するためである。円盤銀河が同等程度の質量(少なくとも15%以上)を持つ別の銀河と融合すると、銀河が破壊されるかまたは円盤銀河としては残らない。この事実は未解決の問題として残っているものの、Λ-CDMモデルが全く間違っていることを意味するものではない。しかし、宇宙の銀河の数を正確に再現するように理論のさらなる改良が求められている。
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