円盤翼とは? わかりやすく解説

円盤翼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/06 14:02 UTC 版)

円盤翼(えんばんよく)は航空機翼平面形の一種。円盤形状の主翼を有し、機体本体も円盤と一体になっているものもある。

概要

STOL機やVTOL機として、構想・試作が行われたが、量産された実用機は存在しない。[1]その形状から、空飛ぶ円盤と誤認されたり、空飛ぶ円盤にちなんだ渾名がつけられる場合がある。

円盤翼機

  • Nemeth Umbrella Plane:マイアミ大学で1934年に製作された機体で、通常形式の胴体に傘型配置で円盤翼を設置していた[2]
  • ザック AS-6:第二次世界大戦中ドイツで開発されていた機体で、円盤型の主翼兼胴体を有し、円盤から機首と単発プロペラが突き出していた[3]
  • V-173 及び XF5U:アメリカ海軍艦上戦闘機として開発されていた機体で原型機のV-173は1942年11月23日に初飛行している[4]。円盤から機首と2基のプロペラが前方に突き出した形状をしており、機体後部は主翼と胴体が一体化し、垂直尾翼と水平尾翼が円盤翼に付けられている[4]。V-173の低速性能は優秀であったが、XF5Uは1947年に開発中止となり、飛行試験は行われていない[4]
  • Weapon System 606A:アブロ・カナダが開発していた超音速機。
  • David Rowe UFO - オーストラリアの航空機エンジニアであるDavid Roweが開発したホームビルト機。円盤型の主翼兼胴体を有し、円盤からプロペラが前方に突き出している。オーストラリアで機体記号(10-8675)も取得している[5]

円盤型機

  • アブロカー英語版:1960年前後にアブロ・カナダ及びアメリカ空軍・アメリカ陸軍によって開発されていた機体。ほぼ円盤形状をしており、機体中央のファンを駆動させ、機体外縁から下方に噴出させることにより浮遊するVTOL機である。試験飛行では、浮遊したものの、非常に不安定であったため、開発は中止された[6]。また、アブロ・カナダは、1956年にアメリカ空軍のプロジェクト1794(USAF Project 1794)と呼ばれる、最大速度マッハ4、航続距離1,852㎞以上、最高上昇限度3万4千メートル以上となる円盤型VTOL戦闘機案に参画している(2012年機密解除)[7][8][9]。この機体は、ほぼ完全な円盤型で機内に放射状に6基のジェットエンジンを搭載し、コックピットは円盤中央にあった[10]。上昇時には、気流を機体中央および外縁部より下方に噴出する[10]。この構想は実現には至らず、後のWeapon System 606Aという円盤型超音速VTOL戦闘機案も実機の完成には至らなかった[11][12]
  • 超級大白鯊(Super great white shark):中国2019年に公開されたステルス攻撃ヘリコプターの試作機体。ほぼ円盤形状をしており、翼胴融合を採用し、機体中央のメインローターと機体左右のジェットエンジンで飛行するVTOL機である[13]中国中央テレビ2020年の珠海エアショーで原型機の初飛行を行うと報じた[14]

脚注

  1. ^ https://patents.google.com/patent/US3067967A/en
  2. ^ Nemeth article
  3. ^ Kreisflügler Sack AS 6/V1 – der „fliegende Bierdeckel“” (pdf) (ドイツ語). ADL. Arbeitsgemeinschaft Deutsche Luftfahrthistorik (1998年). 2019年5月19日閲覧。
  4. ^ a b c 第二次大戦米海軍機全集 航空ファン イラストレイテッドNo.73,P178-179,文林堂,1993年
  5. ^ 10-8675/108675 aviation photos on JetPhotos” (英語). JetPhotos. 2023年10月29日閲覧。
  6. ^ 『アメリカ軍用機 1945~1987 海軍/陸軍機編』文林堂、1987年。 
  7. ^ Michael Rhodes (2012年9月20日). “How to Build a FLYING SAUCER”. National Declassification Center. 2019年5月19日閲覧。
  8. ^ “DECLASSIFIED AT LAST: AIR FORCE'S SUPERSONIC FLYING SAUCER SCHEMATICS”. wired. (2012年10月5日). https://www.wired.com/2012/10/the-airforce/ 
  9. ^ Tim Hornyak (2012年10月20日). “空軍の「空飛ぶ円盤計画」--画像で見る「Project 1794」”. CNET News. https://japan.cnet.com/article/35023028/ 
  10. ^ a b AVRO AIRCRAFT LTD (CANADA). “Project 1794 Final Development Summary Report” (PDF). 2019年5月19日閲覧。
  11. ^ The Avro VTOL Project”. 2019年5月19日閲覧。
  12. ^ Canadian Warplanes,Harold A. Skaarup,iUniverse,2009年
  13. ^ “まるでUFO、異形の軍用ヘリ試作機がお披露目 中国”. CNN. (2019年10月17日). https://www.cnn.co.jp/tech/35144114.html 
  14. ^ “Flying saucer-like attack helicopter to take to the sky in 2020”. 環球時報. (2019年10月11日). http://www.globaltimes.cn/content/1166591.shtml 

関連項目

外部リンク


円盤翼

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翼平面形」の記事における「円盤翼」の解説

詳細は「円盤翼」を参照 平面形が円形に近い円盤翼は、幅を狭くしたまま翼面積稼げるため高い揚力得られるため失速しにく、構造強固になる。幅が狭く失速しにくい特性艦載機向いているため、XF5Uの開発が行われたがメリット少ないため中止された。 このほかにもザック AS-6テスト飛行が行われた。

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