光化学系II(PSII)における反応
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光化学系II(PSII)では水の光分解を行い酸素を発生し、得られた電子をプラストキノン(plastoquinone)に伝達する反応が行なわれる。同時にプロトン濃度勾配の形成も行なっている。PSII pigment-protein complexはヨハン・ダイゼンホーファー、ロベルト・フーバー、ハルトムート・ミヒェルらが三次元構造を決定し、2002年には日本の沈建仁(岡山大学)、神谷信夫(大阪市立大学)らのグループ、2004年ロンドンのBarberらのグループそして2005年ベルリンのZouniおよびSaengerらのグループによるX線結晶構造解析によって、その構成が明らかになりつつあるが、全構成要素の帰属、特に マンガンクラスターと呼ばれる活性中心の詳細な構造は明らかになっておらず、光エネルギーの産業的利用の面からもさらなる高分解能の構造解明が待たれるところである。 反応中心(反応中心P680、4つのクロロフィル=マルチマーモデル) アンテナ色素タンパク質 酸素発生に寄与すると考えられる3種類のサブユニット 他、機能不明の数種のサブユニット 水の光分解活性中心としてマンガン、他カルシウム、塩素といった無機イオン PSIIは紅色光合成細菌の反応中心(bacterial photosynthetic reaction center、bRC)と配列類似性が高いと言われている。以下に、反応ステップの詳細を述べる。 アンテナ色素タンパク質によって集光された680 nmの波長の光でクロロフィルの反応中心のクロロフィルが励起される。 クロロフィルマルチマーから電子が放出されフェオフィチンPheoD1へ電子が移動する。 電子はプラストキノンQAさらにプラストキノンQBへと移動する。QBは2回還元されてQBH2を形成した後、タンパク質内の結合サイトから離脱、キノンプールへ移動する。 2.の反応と共役してマンガン・カルシウムクラスター (Mn-cluster) が酸化される。マンガンクラスターの酸化状態は最も酸化度の低いS0状態からS1、S2、S3とさらに酸化された状態をとることができる。最終的に遷移状態のS4を経てS0状態に戻る際に、水分子がマンガンクラスター上で酸素分子に酸化される。 S0状態が最も酸化度は低いが、通常マンガンクラスターは通常S1状態での存在がもっとも多く見受けられる。これは、YZと対の関係にあるYD (D2-Tyr160, TyrD) がS0状態をS1状態に酸化するためであるといわれている。 P680近傍のチロシンD1-Tyr161あるいはTyrZ、YZに電子伝達され、マンガンクラスターはS4状態で水を分解して還元型S0状態に戻る。 光化学系IIにおける収支式は以下の通りである。 12H2O + 12プラストキノン (PQox) → 24H+in + 6O2 + 12プラストキノール(PQred、還元型プラストキノン)
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