先進国の不満
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/16 21:41 UTC 版)
このようにして採択された国連海洋法条約は領海、公海、大陸棚、排他的経済水域、深海底、海洋環境保護、海洋科学調査など、海洋のあらゆる法制度を包摂する大きな条約となった。 しかし当初条約を批准した国の大半は開発途上国のみに限られ、特に条約第11部の深海底制度に対する先進諸国の不満は根強く、条約採択後10年以上もの間発効のために必要とされた60カ国の批准を得られない状態が続いた。 そもそも国連海洋法条約の採択に際してコンセンサス方式が失敗したのは、草案全体がほぼ固まり会議が最終段階に達した1981年の段階でアメリカのレーガン政権打ち出した条約草案全体の見直し案に原因がある。 アメリカは、条約第11部によって設立される国際海底機構の権限はあまりに強大であり、また海底資源開発に参入する企業体などに課せられる義務があまりに厳しく、すでに海底に埋蔵するレアメタルの開発に投資していたり将来的に投資する意図を持った先進各国企業の利益を十分に保護することができないとして、第11部の深海底制度を中心に反対を表明し条約草案の大幅な修正案を提出した。 この修正案は会議の最終会期において取り上げるにはあまりに広範なもので、結局コンセンサス方式を放棄し票決に付さざるを得なかったのである。 それでも条約案は圧倒的多数の賛成で採択はされたものの、日米欧などほとんどの先進諸国がアメリカの主張に同調し、こうした諸国のほとんどは条約の批准を先送りにした。 このようにして、アメリカに代表される西側先進諸国グループと、条約の早期発効を目指す開発途上国およびそれを支援する東欧社会主義諸国との対立構造が鮮明となった。
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