作風概説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/21 06:53 UTC 版)
「ギュスターヴ・ル・ルージュ」の記事における「作風概説」の解説
ル・ルージュは何でも屋で、剣戟歴史小説から詩、ブリア=サヴァランの注釈書、回想録、戯曲、探偵映画の脚本、エッセイ、評論など広範な分野で著作活動を行なったが、最も得意としたのはファンタジーやサイエンス・フィクションの要素を多く含んだ通俗冒険小説であった。 大衆小説というジャンルにおける彼の初期作品La Conspiration des Milliardaires (1899-1900) (億万長者たちの陰謀)、La Princesse des Airs (1902) (空の王女たち)、Le sous-marin "Jules Verne" (1902) (潜水艦“ジュール・ヴェルヌ”号)は、先行するジュール・ヴェルヌおよびポール・ディヴォワの影響を色濃く受けたものであった。その後の成功作、すなわちLe Mystérieux Docteur Cornélius (1911-12) (謎のコルネリウス博士)や、Le prisonnier de la planète Mars (1908) (火星の囚人)およびLa guerre des vampires (1908) (吸血鬼戦争)という火星を舞台にした連作、などにおいては亜流からの脱却が見られる。『謎のコルネリウス博士』は、人の外観を別人に作り変えてしまう不吉な人物コルネリウス・クラム博士を主人公にした物語であり、ル・ルージュの代表作と見なされている。ただしジャック・サドゥールは、『火星の囚人』は現代人の鑑賞に耐え得るのに対し、『謎のコルネリウス博士』は退屈で脱線が多く評判倒れな作品である旨を述べている。 ルルージュは科学的整合性というものを全く気にかけず、極めて個性的なスタイルで創作を行なった。彼の作風は合理主義と神秘主義、冒険と色恋沙汰が交互に出現する点に特徴がある(前者に特化したヴェルヌとはその点で差異がある)。彼のサイエンス・フィクションはモーリス・ルブラン、ガストン・ルルー、そして特にモーリス・ルナールに影響を与えた。 La Conspiration des Milliardaires (億万長者たちの陰謀)、Todd Marvel, détective milliardaire (富豪探偵トッド・マーヴェル)に見られるようにルルージュは帝国主義を嫌悪し、そのため骨の髄まで反米的であり、結果的には無政府主義と社会主義の間を揺れ動いていた。 その豊富な想像力により、ギュスターヴ・ルルージュは生気のある、魅力的な(時に譫妄的な)作品群を生み出し、シュルレアリストたちから注目されるようになった。しばらくの間は忘れ去られていたが、ブレーズ・サンドラールのL'Homme foudroyé (1945) (雷に打たれた人間)中で紹介されたことにより今日のフランス語圏では比較的よく知られている。1970年代の終わり以降はフランシス・ラカサンの推薦により再刊が進められた。
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