作品の主なテーマ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/24 15:11 UTC 版)
「パトリック・モディアノ」の記事における「作品の主なテーマ」の解説
パトリック・モディアノの小説で繰り返し取り上げられるテーマは不在、喪失、「行方不明者の捜索、過去に失ったものを見出したいという想い」、父母それぞれの過去、自己探求などであり、「その道しるべになるのが戦争(第二次世界大戦、アルジェリア戦争)である」(モディアノ)。こうしたテーマは何度も繰り返され、モディアノ自身、「私は30年以上かけて1冊の本を書いている気がする。つまり、これまで個別に発表した20冊の本から1冊の本が生まれるのだと」と語っている。 さらに、モディアノはノーベル文学賞受賞記念講演で、ユダヤ系イタリア人の画家アメデオ・モディリアーニの仕事に小説家としての彼自身の仕事を重ね、「慎ましい風貌の無名の人々のうちにある優美さや高貴さを明るみに出すことだ」としている。 私は遠戚にあたる画家のアメデオ・モディリアーニのことを思います。彼のもっとも感動的な絵画は、街角の子供たちや女性たち、使用人や百姓、若き徒弟など、無名の人々をモデルとして描かれたものです。モディリアーニは、ボッティチェリやクワトロチェントのシエナ派の画家たちのトスカーナの偉大なる伝統を思わせる鋭いタッチで、こうした人々を描きました。こうしてモディリアーニは、慎ましい風貌の無名の人々のうちにある優美さや高貴さを、彼らに与えた ―― むしろそうしたものを明るみに出した ―― のでした。小説家の仕事は、そうした方向に向かうのでなくてはなりません。小説家の想像力とは、現実をデフォルメするというのとはほど遠く、現実の奥底に入り込んでいき、見かけの背後に隠されているものを探知するために、赤外線や紫外線の力でもって、その現実をありのままにあきらかにするのです。最良の場合、小説家は一種の見者であり幻視家であると思うと言っても過言ではありません。また、小説家はおよそ感じ取ることができないほどの振動を記録する地震計であるとさえ思います。(安永愛訳)
※この「作品の主なテーマ」の解説は、「パトリック・モディアノ」の解説の一部です。
「作品の主なテーマ」を含む「パトリック・モディアノ」の記事については、「パトリック・モディアノ」の概要を参照ください。
- 作品の主なテーマのページへのリンク