他の毒ガニ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/16 16:53 UTC 版)
「スベスベマンジュウガニ」の記事における「他の毒ガニ」の解説
本種も含め、有毒のカニが存在することは地方によっては古くから知られていたようであるが、より広く知られるようになったのはそれほど古いことではない。Hashimotoら(1967)によれば、公式な記録で最も古いものは1965年に鹿児島県の環境衛生課が報告した名瀬市(現・奄美市)での中毒例であるという。この例では45歳の女性と20歳の息子が、味噌汁にして食べた甲羅の幅が約10cmの"セガニ"が原因で中毒症状に陥り、数日後に回復した。また聞き込み調査で得られた同じ名瀬市の別の例では、"ハムンガン"と呼ぶ甲羅の幅約11cmのカニを味噌汁にして食べて2人が死亡、3人が重症となったという。この外にも複数の中毒事例が確認できたため、Hashimotoらは中毒の原因となったと思われる種や、漁師らに毒蟹だと言われているカニなど15種類を奄美と宮古島から集めて調べた。その結果ウモレオウギガニZozymus aeneusとツブヒラアシオウギガニPlatypodia granulosa が有毒と判明し、1967年に報告している。彼らのグループはその後も調査を進め、7科に属する56種を調べた結果、スベスベマンジュウガニも有毒であることを1968年に初めて報告した。1969年には更に種類を増やして8科72種1000個体の調査結果を報告したが、この時には新たな有毒種の追加はなかった。 スベスベマンジュウガニは本州も含めた広い分布域をもつ普通種だが、小型であるためか、これをあえて食べようとする人もいないらしく、2000年現在まで、日本国内での公式の中毒事故例はないようである。 同じオウギガニ科の有毒種で、暖かい海に生息するウモレオウギガニとツブヒラアシオウギガニの2種では、1984年までに日本国内だけでも全部で10件あまりの事故が記録されている。すべての事故が鹿児島県と沖縄県で発生しており、両県では観光施設、保健所などが有毒ガニを食べないようにポスター、パンフレットなどで啓蒙をつづけており、事故件数は減少しつつある。 またFresco(2001)はフィリピン農業研究局(BAR)の月報において、この時までに報告された有毒蟹として、上記3種を含む下記の9種を挙げ、誤って食べないよう注意を呼びかけている。 ヒシガニ科 カルイシガニ Daldorfia horrida オウギガニ科 スベスベマンジュウガニ Atergatis floridus キイマンジュウガニ Atergatis integerrimus 毒性はやや弱い。 ユウモンガニ Carpilius convexus 毒性はそれほど強くはない。 イワオウギガニ Eriphia sebana オオアカヒズメガニ Etisus splendidus 毒性はやや弱い。 ヒロハオウギガニ Lophozozymus pictor 毒性は強い。 ツブヒラアシオウギガニ Platypoda granulose ウモレオウギガニ Zozymus aeneus 最も毒性が強いとされる。 なおスベスベマンジュウガニでは、同じ地域でも有毒個体と無毒個体とが存在する。よって他のカニについても、たまたま最初に食べた個体が無毒であっても別の個体が有毒である可能性もある。したがって、よく知らないカニ(特にオウギガニ科)を不用意に食べるべきではない。
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