仏教への信仰
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 14:49 UTC 版)
戦犯容疑者として収容されてからは、日本仏教の浄土真宗の信仰の深い勝子夫人や巣鴨拘置所の教誨師・花山信勝の影響で、浄土真宗に深く帰依した。花山によると、彼は法話を終えた後、数冊の宗教雑誌を被告達に手渡していたのだが、その際、東條から吉川英治の『親鸞』を差し入れて貰えるように頼まれた。後日、その本を差し入れたのだが、東條が読んでからさらに15人の間で回覧され、本の扉には『御用済最後ニ東條ニ御送付願ヒタシ』と書かれ、板垣征四郎、木村兵太郎、土肥原賢二、広田弘毅等15名全員の署名があり、現在でも記念の書として東條家に保管されているという。 浄土真宗に深く学ぶようになってからは、驚くほど心境が変化し、「自分は神道は宗教とは思わない。私は今、正信偈と一緒に浄土三部経を読んでいますが、今の政治家の如きはこれを読んで、政治の更正を計らねばならぬ。人生の根本問題が書いてあるのですからね」と、政治家は仏教を学ぶべきだとまで主張したという。 また、戦争により多くの人を犠牲にした自己をふりかえっては、「有難いですなあ。私のような人間は愚物も愚物、罪人も罪人、ひどい罪人だ。私の如きは、最も極重悪人ですよ」と深く懺悔している。 さらには、自分を戦犯とし、死刑にした連合国の中心的存在の米国に対してまで、「いま、アメリカは仏法がないと思うが、これが因縁となって、この人の国にも仏法が伝わってゆくかと思うと、これもまたありがたいことと思うようになった」と、相手の仏縁を念じ、絞首台に勇んで立っていったといわれる。 処刑の前に詠んだ歌にその信仰告白をしている。 「さらばなり 有為の奥山 けふ越えて 彌陀のみもとに 行くぞうれしき」「明日よりは たれにはばかる ところなく 彌陀のみもとで のびのびと寝む」 「日も月も 蛍の光 さながらに 行く手に彌陀の 光かがやく」
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