亜鉛投与の有害事象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/08 15:48 UTC 版)
亜鉛投与による有害事象として、嘔気・嘔吐、腹痛などの消化器障害、銅欠乏による貧血、神経障害、鉄欠乏による貧血が報告されている。したがって亜鉛投与中は血清亜鉛値および血清銅値や血清鉄値を経時的(数ヵ月毎)に測定することが必要である。 亜鉛補充投与で、消化器症状(嘔気、腹痛)、血清膵酵素(アミラーゼ、リパーゼ)上昇はよくみられる有害事象・副作用である。しかしこれらの症状・所見はいずれも軽度で、重篤なものは稀で、服薬中止に至ることはほとんどない。血清膵酵素の上昇も全く無症状で、いわゆる急性膵炎ではなく、経過観察だけでよいとされている。Wilson病では、銅欠乏による神経症状発現の報告がある。 注意すべきことは、亜鉛投与で銅欠乏をきたすことがある。亜鉛の長期大量経口投与は銅の腸管での吸収を阻害するのが原因である。銅欠乏で白血球減少も生じる。亜鉛投与により銅欠乏をきたした報告例では、基礎疾患は多岐にわたっている。投与量は亜鉛として1〜3歳で8〜24 mg/日、成人では110〜200 mg/日であり、投与期間は1ヵ月〜5年であった。 銅欠乏発現時の血清銅値は10μg/dL未満の症例が多く、血清亜鉛値は190〜250μg/dLの症例が多かった。これらのことから、血清銅が20〜30μg/dL、血清亜鉛値が200μg/dLを超える場合には、銅欠乏に注意する必要がある。また、稀ではあるが、亜鉛投与によって腸管における鉄の吸収阻害が起こり鉄欠乏になることがある。血清鉄濃度の減少、血清フェリチン値の低下、血清セルロプラスミン減少によるFerroxidase活性の減少などが報告されている。したがって、銅と同様に鉄欠乏に関しても注意する必要がある。
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