乾癬における役割
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/06 16:22 UTC 版)
「インターロイキン-17」の記事における「乾癬における役割」の解説
IL-23/IL-17経路は、自己免疫疾患である乾癬に大きな役割を果たしていることが示唆されている。この疾患では、関節や頭皮周辺の皮膚に放出された炎症性分子に免疫細胞が反応する。この応答は表皮細胞の通常よりも速い再生を引き起こし、その結果、皮膚に赤く鱗状の病変が形成され、慢性的な炎症が生じる。乾癬患者の病変部位から採取した生検の分析では、IL-17を含む細胞傷害性T細胞と好中球が豊富に存在することが示されている。このことは、炎症性免疫細胞の過剰な浸潤とIL-17サイトカインが乾癬の発症に関係していることを示している。 マウスで行われた研究では、IL-23とIL-17のいずれかを除去するすることで乾癬の進行が低下することが示されている。IL-17を標的としたモノクローナル抗体を注入されたマウスでは、このサイトカインの下流のシグナル伝達が遮断または無効化され、表皮の過形成が低下する。同様に、IL-23またはIL-17の受容体を発現しないよう遺伝子改変されたマウスでは、乾癬の病変を引き起こす発がんプロモーターである12-O-テトラデカノイルホルボール-13-アセタート刺激による病変の発生が有意に低下する。 IL-17は、表皮層のケラチノサイトを損傷したりする炎症応答に寄与することで乾癬を促進する。炎症はケラチノサイトが細胞周期の最終段階へ移行し、未成熟な樹状細胞を活性化することで開始される。樹状細胞から放出されるサイトカインは死滅しつつあるケラチノサイトからのTNF-α、IL-1、IL-6の分泌を刺激し、表皮へのT細胞、NK細胞、単球の走化性を引き起こす。これらの細胞はIL-23を放出し、Th17細胞からのIL-17の産生を誘導する。 ケラチノサイトの細胞表面に豊富に存在するIL-17RA受容体とIL-17との相互作用は、表皮細胞のIL-6、抗微生物ペプチド、IL-8、CCL20(英語版)の発現上昇を刺激する。IL-6濃度の上昇は、Th17細胞の挙動を制御する制御性T細胞の能力を低下させることにより、表皮の環境を変化させる。この調節能力の低下により、乾癬病変部ではTh17細胞の無制御な増殖とIL-17の産生が引き起こされ、IL-17シグナルが増強される。抗微生物ペプチドとIL-8は好中球を傷害部位に誘引し、これらの細胞は損傷し炎症を起こしたケラチノサイトを除去する。新たな未成熟な樹状細胞もCCL20によって走化性を介してリクルートされ、その活性化によって炎症のサイクルが再始動し、増幅される。好中球、T細胞、樹状細胞の流入によって放出されるIL-17やその他のサイトカインは、局在した白血球やケラチノサイトへの作用を媒介し、慢性的な炎症を誘発することで乾癬の進行を補助する。
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