主観的な認定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 04:53 UTC 版)
国家や組織、場合によっては個人が、ある国にパーリア国家のレッテルを貼る行為については、国際的にそれを妨げるような取り決めや基準は存在しない。例えば政治コメンテーターで活動家のノーム・チョムスキーは、2003年と2014年の2回にわたり、アメリカ合衆国がパーリア国家になったと述べた。いずれも、ギャラップ調査で全世界のわずか10パーセントの人々がアメリカのイラクに対する戦争を支持し、24パーセントにのぼる人々がアメリカを国際平和に対する最大の脅威とみなしている、という結果が出たのを受けた発言だった。ただこのように世論調査の結果をパーリア国家の基準とする方法は、学術界や、国際的な権力組織やNGOなどが提唱しているような客観的基準には含まれていない。彼らはゲルデンヒュイスが提示した一学説に食って掛かっている。というのもゲルデンヒュイス説をとると、世界の大国の大部分は孤立させられたり政治的・経済的に打撃を受けたりすることがないゆえにパーリア国家となり得ず、個人や国際政治組織によるパーリア国家宣告が国際的標準になってしまうからであるという。 国家レベルでも、対象国の利権や価値を標的として、主観的にパーリア国家を宣告する事態が起きている。宣告側の国が十分に強大であれば、その国の圧力により国際的な合意が形成され、客観的にも認められる「疎外」が成立し得る。ラワルは一例として、アメリカがフィデル・カストロ政権下のキューバに対し、一方的な外交策にでるのではなく、西側諸国への影響力を使ってキューバをパーリア国家扱いしたことを挙げている。この宣告に、客観的な基準は必要なかった。ラワルは、アメリカ・キューバ間問題はイデオロギー対立というより地理学的なものであるとしている。というのも、アメリカにとってキューバはソビエト連邦以上の政治的勢力ではなかったのに、ソビエト連邦がアメリカ沿岸からわずか99マイル(159キロメートル)の距離に核ミサイル基地を設置したことが危機の発端となったからである。
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