不活性電子対効果の原因
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 02:29 UTC 版)
「不活性電子対効果」の記事における「不活性電子対効果の原因」の解説
下に13族元素のイオン化エネルギーを示す。一般にイオン化エネルギー(IE)は原子半径が大きくなるほど小さくなるため、高周期ほど小さい。s軌道の2つの電子(第2+第3イオン化エネルギー)のイオン化エネルギー(IE)の和を調べると、BからAlへは原子サイズの増加に伴って減少する。しかし、Ga、In、Tlはイオン予想以上に高い値を示す。 13族元素のイオン化エネルギー kJ/molIEホウ素アルミニウムガリウムインジウムタリウム第一800 577 578 558 589 第二2427 1816 1979 1820 1971 第三3659 2744 2963 2704 2878 第二 + 第三6086 4560 4942 4524 4849 ガリウムの高いイオン化エネルギー(第2+第3)はdブロック電子による遮蔽が不十分であるために最外殻のs・p電子が原子核に引き寄せられ、収縮するためと説明される。インジウムと比較してタリウムの値が高いのは、充填された4dおよび5f軌道電子による核電荷の遮蔽が不十分であることが一因である(5f軌道に関するものはランタノイド収縮と等価である)。さらにタリウムの6s電子は光速に近い速度で運動しているため、軌道の収縮が生じ、それによる貫入効果の増大と軌道の安定化が生じる(相対論的効果)[4]。 また注意すべき点として、低酸化状態の化合物はイオン性であるのに対し、高酸化状態の化合物は共有結合性た強くなるため、共有結合性の効果を考慮しなければならない。1958年にDragoは、不活性対効果の原因として、重いpブロック元素のM-X結合が弱いため、元素を低酸化状態に酸化するのに必要なエネルギーが高酸化状態に酸化するよりも少ないことが原因と発表した[6]。つまり、イオン結合・共有結合による利得は高酸化数ほど大きいが、高周期の大きな元素ではイオン結合が弱くなり、また軌道の重なりも小さくなるので共有結合による安定化効果も小さくなる。よって、特定の元素の結合が弱いと高酸化状態になりにくい。相対論的効果を用いたさらに詳しい研究では、このことが確認されている[7]。 13族から15族の場合、不活性対効果はさらに「AlからTlへとサイズが大きくなるにつれて結合エネルギーが減少するため、s電子を結合に関与させるのに必要なエネルギーが、2つの追加の結合を形成する際に放出されるエネルギーでは補えない」ことに起因するとされている[2]。 とはいえ、著者らは、金の場合の相対論的効果を含むいくつかの要因が作用しており、「すべてのデータの定量的な合理化は達成されていない」と述べている[2]。結合エネルギーが小さくなる原因については議論があるが、一例として第四周期と第六周期の元素では電気陰性度が大きいため(これも核電荷の遮蔽が弱いことに起因する)、陰性原子との結合が弱まることが原因[要出典]として挙げられている。
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