ランタノイド収縮
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/05 02:46 UTC 版)
元素LaCePrNdPmSmEuGdTbDyHoErTmYbLu電子軌道 5d16s2 4f15d16s2 4f36s2 4f46s2 4f56s2 4f66s2 4f76s2 4f75d16s2 4f96s2 4f106s2 4f116s2 4f126s2 4f136s2 4f146s2 4f145d16s2 Ln3+最外殻電子軌道 4f0 4f1 4f2 4f3 4f4 4f5 4f6 4f7 4f8 4f9 4f10 4f11 4f12 4f13 4f14 Ln3+半径(pm) 106.1 103.4 101.3 99.5 (97.9) 96.4 95.0 93.8 92.3 90.8 89.4 88.1 86.9 85.8 84.8 Ln原子半径(pm) 187.7 182.4 182.8 182.1 (181.0) 180.2 204.2 180.2 178.2 177.3 176.6 175.7 174.6 194.0 173.4 有効核電荷の計算におけるもっとも単純なスレーターの規則からすれば4f軌道は最外殻の6s軌道より主量子数が2つ小さく、原子核の電荷の増加はf電子の増加で完璧に遮蔽されるように思えるかもしれない。しかし実際には6s軌道は貫入により4f軌道の内側にもかなり広がっており、この結果4f軌道による6s軌道に対する遮蔽は不完全となる(また、そもそもスレーターの規則は重原子に対しては誤差が大きい)。 このため、ランタノイドにおいても、原子番号の増加とともに原子半径がわずかずつ縮んでいくという傾向が見られる。イオンの場合も同様に、核電荷の増加に対し5sや5p軌道への遮蔽の増加が小さいため、イオンサイズも原子番号とともに少しずつ小さくなっていく。このように、ランタノイド元素のサイズが原子番号とともに小さくなっていく現象をランタノイド収縮と呼ぶ。 一般に他の典型元素や遷移元素でも族番号が大きくなるにつれ原子半径やイオン半径が減少するが、ランタノイド収縮が重要なのは周期表においてランタノイド以降の元素のサイズに大きな影響を与える点である。通常、同じ族の元素であれば周期が増す(周期表で下に行く)ほど原子半径は増大する。これは最外殻電子の主量子数が増加しより遠くの軌道となるためである。 しかし例えば第4族元素を見ると、第4周期のチタンから第5周期のジルコニウムでは原子半径もイオン半径も通常通り増加しているものの、ジルコニウムから第6周期のハフニウムへの変化では両半径ともやや減少という奇妙な振る舞いを見せる。これはハフニウムの直前にランタノイドが位置し、この部分で原子半径・イオン半径が大きく減少するランタノイド収縮による効果が、周期の増加(最外殻電子の主量子数の増加)による半径の増大の効果を相殺していることに由来する。 なお、類似の効果は遷移元素の存在によっても発生し、例えば第13族のアルミニウムからガリウム(直前に遷移元素が存在する)での半径の増加がやや抑制されている。
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