上告審における裁判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/22 08:45 UTC 版)
民事訴訟において、上告が不適法である場合には決定で上告を却下することができる(民事訴訟法317条1項)。上告理由が、上告が許される事由に明らかに該当しない場合は決定で上告を棄却することができる(同条2項)。上告に理由がない場合には判決で上告を棄却する(同法319条)。 最高裁判所が上告審の場合については、最高裁判1999年3月9日第三小法廷決定によると、上告の理由が明らかに民事訴訟法312条1項及び2項に規定する事由に該当しないことが明らかな(最高裁判所への)上告であっても、「上告裁判所である最高裁判所が決定で棄却することができるにとどまり(民事訴訟法317条2項)、原裁判所又は上告裁判所が民事訴訟法316条1項又は317条1項によって却下することはできない」。 刑事訴訟においては上告が不適法である場合には決定で上告を棄却する(刑事訴訟法414条、385条、395条)。上告に理由がない場合には判決で上告を棄却する(刑事訴訟法408条)。 上告が却下又は棄却された場合には、原判決が確定する。 上告に理由がある場合又は最高裁判所の職権調査で原判決を維持できないことが判明した場合には、原判決を破棄する。法律審としての建前からは、原判決を破棄する場合、原裁判所(控訴審が行なわれた裁判所。高等裁判所が第一審の場合にはその高等裁判所)に差し戻して審理させることが普通である(民事訴訟法325条。刑事訴訟法413条本文)。このことを破棄差戻しという。これは、民事事件の上告審では法律審であるため事実調べができず、刑事事件でも事実認定が不十分な場合は事実審である下級審で再度必要な審理をさせる必要があるからである。これに対して、判決を確定させないことによって、当事者の双方に主張を述べさせる機会を与えるためである、あるいは、上告審は書面審理が原則のため、書面審理のみで判決を確定させるのは問題があるためであるという見解もある。差戻し後の判決にさらに上告することも可能であり、上告→差戻し→上告→差戻し、と繰り返し、裁判が長期化した例もある。 また、管轄違い等により原判決を取り消し、原審とは別の裁判所に移送すること(民事訴訟法第325条第2項、刑事訴訟法第412-413条)を破棄移送という。 原裁判所に差し戻さず、原判決を破棄して最高裁判所が自ら判決し、上告審で判決を確定させることを破棄自判という。これは、 裁判が長期化することにより不利益がある場合 民事事件において下級審の認定した事実だけで原審と違う判決が下せる場合 刑事裁判において被告人に有利な方向に判断を変更する場合で、これ以上審理する必要がない場合 などに行われることがある(民事訴訟法326条、刑事訴訟法413条ただし書)。
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