上告審における公判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 08:11 UTC 版)
最高裁判所は法律審で、職権で事実関係について調査する場合(刑事訴訟法第411条)を除き、事実関係に関する審理は行われない。上告裁判所は、刑事訴訟法第408条の規定により、上告を棄却する際には、弁論を経ないで棄却することができる(民事訴訟の場合も同様に、民事訴訟法第319条により、口頭弁論を経ずに上告を棄却することができる)。一方で、原審破棄をする場合は公判を開かなければならない。公判を経た上で上告を棄却することも可能だが、現在の最高裁は大量の上告案件を抱えており、小法廷では上告棄却をする際、ほとんどは公判を開かず、三行決定や三行判決で上告を棄却することが多い。 そのため、判決によって上告審の結論が出される場合、最高裁の小法廷が公判(民事訴訟の場合は口頭弁論)を開くか開かないかで、判決の結果が事前に判明することになる。ただし例外として、死刑判決に対する上告事件の場合は、原判決を見直すか否かに関係なく、いかなる場合でも最高裁で公判を開き、弁護人・検察官双方の意見を聴く(弁論を行う)ことが慣例となっている。これは慎重に審理して極刑を言い渡したとするためである。最高裁が公判を開かずして控訴審の死刑判決を維持した事例は、1949年(昭和24年)に発生した三鷹事件の裁判で、竹内景助の上告を1960年(昭和35年)に棄却した事例が最後である。同事件の控訴審において書面審理だけで一審の無期懲役判決を破棄し死刑判決を言い渡したことが問題視されたことがきっかけで、死刑判決事件に対する上告審では毎度、弁論を行うために公判を開くこととなった。 最高裁で弁論が開かれても、原審破棄の判決が言い渡されるとは限らない。1992年(平成4年)に発生した国立市主婦殺害事件(控訴審で第一審の死刑判決が破棄自判され、無期懲役が言い渡された事件)の審理では、検察官の上告を受け、1999年(平成11年)10月29日に最高裁第二小法廷(福田博裁判長)が弁論を開いたが、同小法廷は同年11月29日の上告審判決で、上告棄却の判決を言い渡したため、無期懲役が確定した。
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