レーティングのインフレ・デフレ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 06:27 UTC 版)
「イロレーティング」の記事における「レーティングのインフレ・デフレ」の解説
イロレーティングは、試合が行われるごとに対戦した当事者間でレーティングが更新されるため、1500が平均的プレイヤーを表す本来のレーティング値から乖離することがある。すなわち、全プレイヤーのレーティングが過大になるレーティングインフレ、あるいは全プレイヤーのレーティングが過小になるレーティングデフレである。イロレーティングは、そもそも相対評価の指標であるから、レーティングがインフレ・デフレしたとしても、現在そのリーグに所属するプレイヤー間の実力の比較に支障はない。しかしながら、レーティングインフレ・デフレによって、過去のプレイヤーのレーティングとの比較ができなくなったり、あるいは特定のリーグでレーティングインフレ・デフレが生じた結果、他のリーグのレーティングとの比較ができなくなったりするという問題が生じることがある。 例えば、あるプレイヤーがレーティング3000でリーグに参戦し、レーティングを1000まで落としてから引退したとする。このとき、このプレイヤーは、現役中に差し引き2000のレーティングを他のプレイヤーに奪われたことになる。すなわち、このプレイヤーによって、リーグ全体のレーティングの合計値が2000増加したことになる。逆に、レーティング1000で参入して3000で引退するプレイヤーがいれば、リーグ全体のレーティングを合計2000減少させたことになる。このように、各プレイヤーのレーティングの著しい減少(増加)は、リーグ全体のレーティングの増加(減少)に繋がる。 もっとも、プレイヤー1人の影響によるレーティングの増減はわずかなものであり、増加させるプレイヤーと減少させるプレイヤーとが互いに相殺していることから、大きな影響はない。しかし、何らかの原因により、レーティングの増加あるいは減少ばかりが生ずれば、レーティングインフレやレーティングデフレが起きるのである。 この他に、イロレーティングが前提としている「勝敗比は積によって推移する」という仮定(前述)が満たされない場合、すなわち、3人のプレイヤー X , Y , Z {\displaystyle X,Y,Z} について、 W X Z W Z X = W X Y W Y X × W Y Z W Z Y {\displaystyle {\frac {W_{XZ}}{W_{ZX}}}={\frac {W_{XY}}{W_{YX}}}\times {\frac {W_{YZ}}{W_{ZY}}}} という関係が満たされない場合には、上位者と下位者のレーティング差が過大になったり過小になったりすることがある。その結果、平均的プレイヤーのレーティングは安定していても上位プレイヤーのレーティングだけがインフレして下位プレイヤーのレーティングだけがデフレする(またはその逆)という現象が生ずることがある。 具体的には、チェスのFIDE公式レーティングは、新しい世代のプレイヤーにおけるコンピューターソフトを利用した研究の普及などの原因により、旧時代のトッププレイヤーの多くがレーティングを大きく落として引退し、結果として1985年ごろから年に数点ずつレーティングインフレを起こしている。チェスではグランドマスターをはじめとするタイトルをレーティングで規定しているため、レーティングインフレによってタイトル保持者が増加するという現象に繋がっている。 また、日本のオンライン将棋対局場である将棋倶楽部24では、初期レーティングを自己申告で決められることから、これを過小に申告して登録後にレーティングを急上昇させたり、あるいはコンピューター将棋ソフトを利用した不正行為によってレーティングを上昇させた後で不正が発覚して退会処分になったりといった事例が重なり、著しいレーティングデフレの状態にあると指摘されている。将棋倶楽部24では、段級位の基準をレーティングで定めているため、レーティングデフレによって一般の段級位との釣り合いが取れなくなる問題に繋がっている。 レーティングインフレ・デフレの問題を解決するため、様々な改良が試みられており、例えばオンライン将棋対局場の81Dojoでは、オンライン将棋対局ではレーティングデフレが起きやすいことを考慮して、レーティングを下がりにくく調整した非対称レーティングを採用している。
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