レンチウイルスベクター
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/11 01:32 UTC 版)
「ウイルスベクター」の記事における「レンチウイルスベクター」の解説
詳細は「en:Lentivirus」を参照 レンチウイルスはレトロウイルス科の一属であり、他のレトロウイルスは分裂している細胞にしか感染できないが、レンチウイルスは分裂していない細胞のゲノムに組み込むことができる特徴があり、遺伝子治療のベクター(英語版)として使用される。ウイルスゲノムはRNAであり、ウイルスが細胞に侵入すると逆転写によりDNAが生成され、ウイルスインテグラーゼ酵素により宿主ゲノムにランダムな位置で挿入される。最近の調査結果では、ウイルスDNAの挿入はランダムではなく、特定の活性遺伝子に誘導され、ゲノム組織化に関連することが実際に示唆されている。宿主ゲノムに挿入されたベクター(現在はプロウイルスと呼ばれる)はゲノム内に残り、細胞が分裂するとその子孫に受け継がれる。問題を引き起こす可能性がある挿入部位を決定する技術はまだ存在しない。また、プロウイルスは細胞内遺伝子の機能を阻害し、癌(がん)の発生を促進するがん遺伝子を活性化させる可能性があることから、レンチウイルスの遺伝子治療への応用が懸念されている。しかし、いくつかの研究によると、レンチウイルスベクターは、ガンマレトロウイルスベクターよりも、癌を引き起こす可能性のある場所に組み込まれにくいことが示されている。より具体的には、ある研究では、腫瘍の発生率がはるかに高いマウス系統において、レンチウイルスベクターは、腫瘍発生率の増加も、腫瘍の早期発症も引き起こさなかった。さらに、HIVの治療のための遺伝子治療でレンチウイルスベクターを利用した臨床試験では、変異原性または腫瘍学的事象の増加は見られなかった。 安全上の理由から、レンチウイルスベクターは複製に必要な遺伝子を決して持たない。レンチウイルスベクターを生産するために、いくつかのプラスミドがいわゆるパッケージング細胞株、一般的にはHEK 293に遺伝子導入される。一般にパッケージングプラスミドと呼ばれる1つ以上のプラスミドは、カプシドや逆転写酵素などのビリオンタンパク質をコードしている。別のプラスミドは、ベクターによって送達される遺伝物質を含む。これは一本鎖RNAウイルスゲノムを生成するために転写され、ψ(psi)配列の存在によって特徴づけられる。この配列は、ゲノムをビリオンにパッケージングするために使用される。
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