ライン相関を利用したクシ形フィルタ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/28 15:40 UTC 版)
「NTSC」の記事における「ライン相関を利用したクシ形フィルタ」の解説
上述した通り色副搬送波周波数は水平同期周波数の 455 2 {\displaystyle {\tfrac {455}{2}}} 倍であり、言い換えれば1本の走査線は色副搬送波227.5サイクル分の時間で描かれるということである。走査線上のある1点に注目するとその直上や直下の走査線の同じ水平位置では色副搬送波は半サイクルずれ、位相が反転している。仮に1色で塗りつぶされている画像を撮影してNTSCの映像信号に変換したとき生成されるクロマ信号の振幅は一定になるが色副搬送波との位相差も一定になるので、当該画像のクロマ信号は直上直下の走査線と比較すると同じ水平位置では位相だけが反転していることになる。 自然画像を撮影し走査線で分解して映像信号にしたものを仔細に分析すると、直上直下の走査線ではあまり大きく内容が変わらず同じ水平位置では輝度・彩度・色相とも似通っている(ライン相関性が高い)場合が多い。そこで映像信号を正確に走査線1本分の時間( 572 9 {\displaystyle {\tfrac {572}{9}}} μ秒)遅らせる遅延回路を通した信号と現在送られてきている信号とを足し合わせると画面のほとんどの領域でクロマ信号は打ち消しあい、残った輝度信号だけが得られる。逆に過去の信号との差分を取ると輝度信号は差し引きほぼゼロになり、位相が反転しているクロマ信号だけが残留する。 遅延回路を用いたこのフィルタは遅延時間の逆数の整数倍の周波数で利得にピークができ、周波数特性グラフで見るとちょうど櫛の歯のようになっている事から、クシ形フィルタと呼ばれる。 利点 輝度信号を帯域制限せず分離することが出来、大画面に表示しても画像がぼやけず評価に耐える先鋭度を保つ。また、クロスカラーや色相歪みも周波数分離式に比べて少ない。 欠点 遅延回路用の部品と、その遅延時間を正確に水平走査線1本分の時間に調整するコストが製品に加算される。ライン相関性が低い領域では副作用も出る。例えば、斜め線の周囲に偽色がまとわりついたり星条旗の紅白の境目にドット妨害が残ったりする。また隣接ラインとの信号を単純に加減算すると画像が垂直方向にぼけ、水平方向だけはクッキリしたいびつな絵になってしまう。これらを解決するためには走査線間の相関性を検出し、相関性が低い場合は周波数分離に切り換える回路と水平走査線1本分の時間を更に遅らせた信号との3ライン間の比較演算により垂直解像度の低下を防ぐ回路が必要になる。そしてそれらの回路を追加実装すると、機器の価格は確実に上昇する。
※この「ライン相関を利用したクシ形フィルタ」の解説は、「NTSC」の解説の一部です。
「ライン相関を利用したクシ形フィルタ」を含む「NTSC」の記事については、「NTSC」の概要を参照ください。
- ライン相関を利用したクシ形フィルタのページへのリンク