ヨーロッパの独立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/07 05:24 UTC 版)
アメリカとヨーロッパの利害は対立するようになっている。ヨーロッパは正常な貿易収支内で原料とエネルギーを輸入し、工業製品や農作物を輸出する。また近隣のロシアと中東は重要な貿易相手である。中東は人口増大により石油を売らざるを得ず、ヨーロッパと敵対する理由はない。このため、ヨーロッパにとっては世界が平和であることが利益になる。 アメリカはミリシアに見られるように政府に対する本質的な不信があるが、西欧諸国では、福祉制度に見られるように、本質的には信頼がある。このためアメリカ的社会モデルは西欧諸国を不安定にする。とりわけ、アメリカの示す市場原理主義は、社会の結束が強い直系家族社会であるドイツと日本に衝撃となる。アメリカのマスメディアは両国を後進的で閉鎖的として改革を要求するが、実際には両国経済が近年不調であるのは生産性が高すぎるからだとトッドは指摘する。1929年の世界恐慌が、当時最も生産性が高かったアメリカ経済を直撃したのと同様である。そもそも、ドイツと日本がアメリカのように巨額の貿易赤字を出すことは起こり得ない。また、ユーロはドルに対抗する国際通貨であり、ドルの基軸通貨としての地位を脅かすものである。東ヨーロッパとロシアはすでにユーロ圏に組み込まれつつある。 ロシアは冷戦に敗れ、1998年まで経済が縮小し、また少子化により人口減少が進んでいる。しかしロシアはあらゆる撤退を受け入れた結果、戦略的にアメリカに対抗する存在に戻った。すなわち、ロシアは豊富な天然資源を持ち、十分な防衛力を持ち、アメリカ市場を必要とせず、そしてもはや危険ではないのである。ロシアは無論それを理解している。ウラジーミル・プーチンは2001年9月25日にドイツ連邦議会で演説し、「ヨーロッパがその能力をロシアのそれと結合させるなら、ヨーロッパは本当に独立した世界的大国としての声望をさらに固めることになるだろう」と述べた。
※この「ヨーロッパの独立」の解説は、「帝国以後」の解説の一部です。
「ヨーロッパの独立」を含む「帝国以後」の記事については、「帝国以後」の概要を参照ください。
- ヨーロッパの独立のページへのリンク