マローン館の火災
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/12 14:46 UTC 版)
「アルスター博物館」の記事における「マローン館の火災」の解説
北アイルランドの内戦中、1976年11月にベルファストでマローン邸爆撃事件が発生し、同所に保管してあった当館の衣裳と染織品はほぼすべて破壊された。 マローン館はカントリーの公園に立つ大邸宅で、当時は北アイルランドのナショナルトラストが本部事務所に使用していた。 背景の事情として衣裳ほかの染織品資料に不適切なアルスター博物館の保管庫からマローン館への移管が進み、事件の年の秋には作業をほぼ終えていた。博物館は同所の最上階を改装して衣装と織物を保管し、また織物保存工房を置いた。 1976年11月11日、マローン館に侵入した武装勢力は1階と2階に爆弾を1個ずつ仕掛けると館内にいた人々に5分後に爆破すると通告。全員、無事に避難し、1階の一部の部屋は比較的無傷だったが2階で出火、上階に置かれた衣装と染織品は焼失した。 かつて当館の染織品の収集はヴィクトリア&アルバート博物館およびアムステルダム国立美術館に次ぐ世界有数といわれたように、ことに麻のダマスク織の資料類ほかアイルランドとヨーロッパ大陸の麻製品を網羅していた。 焼失した衣裳類 最古の資料には1600年頃の保存状態の良い婦人用ジャケットがあり、多色染めの絹地に銀糸刺繍を施してあった。また豊富に揃った18世紀の衣服類のほとんどはスピタルフィールズの絹を使ったローブなど地元で縫われ、なかには製造地の特定できる「サムホームズ–ダウン州」のスタンプが裏地におされた麻製ペチコート(1745年頃)などもあった。婦人服の資料は18世紀末から1970年代までほぼすべての年の見本を集めてあった。紳士服の収集範囲にはギャップがあり、18世紀に集中した。また衣装や染織品全体を見るとレース類の収集期間が長く包括的に製品を集めた結果、生産地こそアイルランドに偏ったものの適切に体系的に収集されていた。 被災を免れた資料 現存する数少ない資料のうちタペストリー類は火災当時、当館からマローン館への移管が終わっていなかった。ポール・サンダースによる「メッカへの巡礼」、17世紀フランドル製の新緑色のタペストリー、ジョシュア・モリス作とされるアラベスク模様の品ほかが焼失を免れた。 当館の大規模な現代の宝飾品類は蒐集家で宝飾史研究者のアン・ハル=グランディ(英語版)の寄贈品を中心に、細かい刺繍のあるレノックス・キルト(マーサ・レノックス Martha Lennox の署名と1712年の日付入り)、また展示中だったため難を逃れたのは1950年代と1960年代のカクテルドレスと夜会服合計4点である。
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