マクラーレン・MCL35とは? わかりやすく解説

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マクラーレン・MCL35

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/23 00:06 UTC 版)

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マクラーレン・MCL35 / MCL35M
MCL35M(2021年オーストリアGP仕様)
カテゴリー F1
コンストラクター マクラーレン
デザイナー ジェームス・キー(テクニカルディレクター)
先代 マクラーレン・MCL34
後継 マクラーレン・MCL36
主要諸元
エンジン MCL35
ルノー E-Tech 20 1.6L V6 ターボ
MCL35M
メルセデスAMG F1 M12 E Performance 1.6L V6 ターボ
タイヤ ピレリ
主要成績
チーム マクラーレンF1チーム
ドライバー カルロス・サインツ
ランド・ノリス
ダニエル・リカルド
出走時期 2020年2021年
初戦 2020年オーストリアGP
初勝利 2021年イタリアGP
最終戦 2021年アブダビGP
出走 優勝 表彰台 ポール Fラップ
38 1 7 1 5
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マクラーレン・MCL35 (McLaren MCL35) は、マクラーレン2020年のF1世界選手権参戦用に開発したフォーミュラ1カーである。当項ではその改良版である、2021年のF1世界選手権参戦用に開発したマクラーレン・MCL35MMclaren MCL35M)についても述べる。

概要

MCL35は2020年2月13日にマクラーレン・テクノロジーセンターで正式発表された[1]

前年に加入したテクニカルディレクターのジェームス・キーが主導して開発された最初のマシンであり、翌年からパワーユニット(PU)をメルセデスに変更するため、ルノーPUを搭載する最後のマシンとなる[1]

前年のMCL34をベースに制作されたが[1]、ノーズがより細くされて先端部の開口部がなくなり、フロントサスペンションも変更された。インダクションボックスは電球型に変更され、一部の冷却部品がサイドポッドからエンジンカバーの下に移動したことに伴って6区画に分けられた[2]。カラーリングのパパイヤオレンジとブルーは配置が変更され、軽量化のためにマット塗装を施した[1]

7月29日にマクラーレンはガルフ・オイルと新たなパートナーシップ契約を結んだことを発表[3]。それ以降に行われたGPではマシンおよびウェアにてガルフのロゴを掲載して出走した。

シーズン

2020年

ドライバーはカルロス・サインツランド・ノリスのコンビを継続。

MCL35プレシーズン・テスト仕様

前年の進化型[4]という位置づけであるが、細かな改良[5][6]を加えており、プレシーズンテストではマシンに対し好意的なコメント[7][8]を残してテストを終えた。

開幕戦となる予定だったオーストラリアGPではチームスタッフが2019新型コロナウイルス(COVID-19)に感染したことによりレースから撤退した[9]。これを受け、同GPは中止となった[10]。その後コロナウイルスの世界的流行の影響が深刻化し、F1は休止状態となった。そして、4カ月遅れの開幕戦となったオーストリアGPでは、決勝はサバイバルレースとなり、2台とも常時入賞圏内をキープ。そんななか、終盤4位を走行していたノリスだったが、2位のハミルトンがレース中の接触の責を問われ、5秒のタイムペナルティ加算が確定。それを受け、ノリスはペースアップし、最終ラップでファステストラップを記録した結果、その5秒圏内に入ることに成功し、繰り上げという形ではあるが3位表彰台を獲得[11]。チームとしては、ノリスのキャリア初の表彰台獲得を含めたダブル入賞でスタートを切ることとなった[12]。また、第8戦イタリアGPではサインツが3番手を獲得[13]。決勝ではメルセデス勢が結果的に失速。そして、赤旗中断からの再スタート後は2位を走行し、自身のキャリア初優勝およびチームとしても2012年ブラジルGP以来の優勝も射程にとらえたが、首位のピエール・ガスリーとのマッチレースに敗れ2位に終わった[14]。それでも、シーズンに複数回表彰台を獲得したのは2012年以来の成績となる。

シーズン全体の成績だが、チーム側はパフォーマンスを安定させることに苦労しているというコメント[15][16][17]にもあるようにコース別での好不調、ピット作業ミス[18][19]によるタイムロス、PUトラブル[20]や接触事故などの不運[21][22]で失ったポイントもあるが、チームとしてポイントを逃したのは第10戦ロシアGPのみで、それ以外のGPではすべてポイントを獲得[23]。また、最終的な成績は2012年以来となるコンストラクターズ3位獲得となっている。

2021年

規定により前年型シャシーに規制を設けて使うことになり、前年度中からメルセデス型円形ノーズ等をトークン消費しないよう早めに導入し、マクラーレン・MCL35Mとして出走する事とした。MはMercedes(メルセデス)製パワーユニット、Modify(変更)などの意味がある。基本的に前年からのカラーリングを継続していたが、第5戦モナコGPではガルフ・オイルのイメージをメインカラーとしたオレンジと水色の特別カラーリングに、最終戦アブダビGPではブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)の電子たばこ『Vuse』とのコラボレーションによるスペシャルカラーリングに変更して出走した。第14戦イタリアGPでは今季全チーム中唯一のワンツー・フィニッシュで9年ぶりに優勝を達成した。

スペック

[24]

シャシー

パワーユニット(2020年)

  • 型式: ルノー E-Tech 20
  • 最小重量: 145kg
  • パワーユニットコンポーネント:内燃エンジン(ICU)、MGU-K、MGU-H、エネルギー貯蔵装置(ES)、ターボチャージャー(TC)、コントロールエレクトロニクス(CE)

パワーユニット(2021年)

  • 型式: メルセデス M12 E Performance
  • 最小重量: 145kg
  • パワーユニットコンポーネント:内燃エンジン(ICU)、MGU-K、MGU-H、エネルギー貯蔵装置(ES)、ターボチャージャー(TC)、コントロールエレクトロニクス(CE)

エンジン

  • 排気量: 1,600cc
  • 気筒数: V型6気筒
  • バンク角: 90度
  • バルブ数: 24
  • 最高回転数: 15,000rpm(レギュレーションで規定)
  • 最大燃料流量: 100kg/h(10,500 rpmの場合)
  • 最大燃料容量: 110kg
  • 燃料噴射方式直接噴射(1シリンダーあたり1噴射器、最大500bar
  • ターボチャージャー: 単段コンプレッサー、排気タービン、共通シャフト

エネルギー回生システム(ERS)

  • 機構: モーター・ジェネレーター・ユニットによるハイブリッド・エネルギー回生。MGU-Kはクランクシャフト、MGU-Hはターボチャージャーに接続
  • エネルギー貯蔵装置(ES): リチウムイオンバッテリー(20-25kg)、1周あたり最大4MJを貯蔵
  • MGU-K
    • 最高回転数: 50,000rpm
    • 最大出力: 120kW
    • 最大回生量: 1周あたり2MJ
    • 最大放出量: 1周あたり4MJ
  • MGU-H
    • 最高回転数: 125,000rpm
    • 最大出力: 無制限
    • 最大回生量: 無制限
    • 最大放出量: 無制限

トランスミッション

  • ギアボックス: カーボンファイバーコンポジット製ケース、縦置き
  • ギア数: 前進8速、後退1速
  • ギア操作: 電動油圧式シームレスシフト
  • ディファレンシャル: 遊星歯車構造マルチプレート・リミテッド・スリップ・クラッチ式ディファレンシャル
  • クラッチ: 電動油圧式カーボンファイバー製マルチプレートクラッチ

記録

MCL35

key

No. ドライバー AUT
STY
HUN
GBR
70A
ESP
BEL
ITA
TUS
RUS
EIF
POR
EMI
TUR
BHR
SKH
ABU
ドライバーズポイント ポイント ランキング
2020 55 サインツ 5 9 9 13 13 6 DNS 2 Ret Ret 5 6 7 5 5 4 6 105 202 3位
4 ノリス 3 5 13 5 9 10 7 4 6 15 Ret 13 8 8 4 10 5 97

MCL35M

No. ドライバー BHR
EMI
POR
ESP
MON
AZE
FRA
STY
AUT
GBR
HUN
BEL
NED
ITA
RUS
TUR
USA
MXC
SÃO
QAT
SAU
ABU
ドライバーズポイント ポイント ランキング
2021 3 リカルド 7 6 9 6 12 9 6 13 7 5 11 4 11 1 4 13 5 12 Ret 12 5 12 115 275 4位
4 ノリス 4 3 5 8 3 5 5 5 3 4 Ret 14 10 2 7 7 8 10 10 9 10 7 160

脚注

[脚注の使い方]

注釈

出典

  1. ^ a b c d マクラーレンMCL35:マット塗装採用のスリムなマシン「僕のベイビー」とドライバーも大満足の出来栄え”. autosport web (2020年2月14日). 2020年2月23日閲覧。
  2. ^ F1新車”雑感”解説:さらなる前進を目指して……マクラーレンMCL35”. motorsport.com (2020年2月17日). 2020年2月23日閲覧。
  3. ^ マクラーレンとガルフ・オイルが再タッグ。F1および市販車部門で提携www.as-web.jp(2020年7月29日)2020年9月7日閲覧。
  4. ^ マクラーレンF1、2020年新車「MCL35」を世界初公開…コンストラクター4位死守目指すformula1-data.com(2020年2月13日)2021年5月21日閲覧。
  5. ^ 【津川哲夫のF1新車初見チェック】マクラーレンが独特な昨年型から王道路線へ。ワークスルノーとの対決がとにかく楽しみwww.as-web.jp(2020年2月15日)2021年5月21日閲覧。
  6. ^ F1メカ解説|マクラーレン、ベスト・オブ・ザ・レストを確保するための積極開発jp.motorsport.com(2020年3月8日)2021年5月21日閲覧。
  7. ^ マクラーレン、仕上がりは上々? 「MCL35は“トゲ”の少ないマシン」とノリスjp.motorsport.com(2020年3月9日)2021年5月21日閲覧。
  8. ^ 2020年 F1バルセロナテスト:グラフで振り返る最速ラップと総周回数formula1-data.com(2020年3月3日)2021年5月21日閲覧。
  9. ^ マクラーレン、F1オーストラリアGPを棄権…スタッフが新型コロナウイルス検査で陽性”. aformula1-data.com (2020年3月12日). 2021年5月21日閲覧。
  10. ^ F1オーストラリアGPの中止が正式に発表。F1チームスタッフの新型コロナ感染を受け”. motorsport.com (2020年3月13日). 2021年5月21日閲覧。
  11. ^ 初表彰台ノリスの、衝撃的最終ラップ……マクラーレン「彼は明らかに成長した」jp.motorsport.com(2020年7月7日)2021年5月21日閲覧。
  12. ^ コンスト2位発進!開幕W入賞とノリスの初表彰台に沸くマクラーレンformula1-data.com(2020年7月6日)2021年5月21日閲覧。
  13. ^ カルロス・サインツ、モンツァで今季2度目の3番手「レッドブル・ホンダに勝てるとは…」マクラーレン快進撃の理由は?formula1-data.com(2020年9月6日)2021年5月21日閲覧。
  14. ^ サインツ2位「あと1周あればガスリーをとらえることができたかも」マクラーレン【F1第8戦】www.as-web.jp(2020年9月7日)2021年5月21日閲覧。
  15. ^ マクラーレン︰お熱いのがお嫌い?冷却に問題抱え急遽ボディーワークを変更 / F1-70周年記念GP《予選》2020formula1-data.com(2020年8月9日)2020年8月10日閲覧。
  16. ^ F1中団トップを目指すマクラーレン代表「一貫したパフォーマンスを発揮できないことが今の問題点」www.as-web.jp(2020年9月22日)2021年5月21日閲覧。
  17. ^ マクラーレン、コンストラクターズ3位死守の鍵は“風に敏感なマシン”の改善?jp.motorsport.com(2020年10月8日)2021年5月21日閲覧。
  18. ^ マクラーレンF1代表、タイヤ交換時のミスを謝罪「渋滞のなかに送り出すことになってしまった」www.as-web.jp(2020年7月15日)2021年5月21.日閲覧。
  19. ^ サインツJr.「ホイールガンのトラブルで、それまでの努力が水の泡に」:マクラーレン F1第5戦決勝www.as-web.jp(2020年8月11日)2021年5月21日閲覧。
  20. ^ スパでサインツJr.を襲ったPUトラブルがノリスにも発生。イグニッションの問題でリタイアにwww.as-web.jp(2020年10月14日)2021年5月21日閲覧。
  21. ^ サインツJr.「突然タイヤが壊れて最終周にピットイン。本当に残念で悔しい」:マクラーレン F1第4戦決勝www.as-web.jp(2020年8月4日)2021年5月21日閲覧。
  22. ^ 金輪際二度とストロールには近づかない、とランド・ノリス…過去から何も学んでいないと批判formula1-data.com(2020年10月26日)2021年5月21日閲覧。
  23. ^ 2020 Constructor Standings: McLaren Renaultwww.formula1.com 2021年5月21日閲覧。
  24. ^ McLaren MCL35 Technical Specification”. McLaren Racing (2020年2月13日). 2020年2月23日閲覧。



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