マクスウェルの方程式と特殊相対性理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 20:57 UTC 版)
「マクスウェルの方程式」の記事における「マクスウェルの方程式と特殊相対性理論」の解説
19世紀後半を通じて物理学者の大半は、マクスウェルの方程式において光速度が全ての観測者に対して不変になるという予測と、ニュートン力学の運動法則がガリレイ変換に対して不変を保つことが矛盾することから、これらの方程式は電磁場の近似的なものに過ぎないと考えた。しかし、1905年にアインシュタインが特殊相対性理論を提出したことによって、マクスウェルの方程式が正確で、ニュートン力学の方を修正すべきだったことが明確になった。これらの電磁場の方程式は、特殊相対性理論と密接な関係にあり、ローレンツ変換に対する不変性(共変性)を満たす。磁場の方程式は、光速度に比べて小さい速度では、相対論的変換による電場の方程式の変形に結び付けられる。 電場と磁場による表現では、共変性が見にくいため、4元ポテンシャル Aμ を考える。 A μ = ( ϕ / c , A ) , A μ = η μ ν A ν = ( ϕ / c , − A ) {\displaystyle A^{\mu }=(\phi /c,{\boldsymbol {A}}),~A_{\mu }=\eta _{\mu \nu }A^{\nu }=(\phi /c,-{\boldsymbol {A}})} 但し、重複するギリシャ文字に対してはアインシュタインの縮約記法に従って和をとるものとし、計量テンソルは ημν = diag(1, −1, −1, −1) で与えるものとする。また、各ギリシャ文字は 0,1,2,3 の値を取り、0は時間成分、1,2,3は空間成分を表すものとする。特に時空の座標については (x0, x1, x2, x3) = (ct, x, y, z) である。 電磁ポテンシャルから構成される電磁場テンソル F μ ν ≡ ∂ μ A ν − ∂ ν A μ = − F ν μ {\displaystyle F_{\mu \nu }\equiv \partial _{\mu }A_{\nu }-\partial _{\nu }A_{\mu }=-F_{\nu \mu }} (0a,0bに対応) を導入する。電場、磁場との対応関係は ( F 01 , F 02 , F 03 ) = ( E 1 / c , E 2 / c , E 3 / c ) , ( F 32 , F 13 , F 21 ) = ( B 1 , B 2 , B 3 ) {\displaystyle (F_{01},F_{02},F_{03})=(E_{1}/c,E_{2}/c,E_{3}/c),~(F_{32},F_{13},F_{21})=(B_{1},B_{2},B_{3})} となる。 このとき、マクスウェル方程式はローレンツ変換に対しての共変性が明確な形式で、次のような2つの方程式にまとめられる。 ∂ ρ F μ ν + ∂ μ F ν ρ + ∂ ν F ρ μ = 0 {\displaystyle \partial _{\rho }F_{\mu \nu }+\partial _{\mu }F_{\nu \rho }+\partial _{\nu }F_{\rho \mu }=0} (1a,1bに対応) ∂ μ F μ ν = μ 0 j ν {\displaystyle \partial _{\mu }F^{\mu \nu }=\mu _{0}j^{\nu }} (2a,2bに対応) 但し、jμ は4元電流密度 j μ = ( c ρ , j ) {\displaystyle j^{\mu }=(c\rho ,{\boldsymbol {j}})} である。このとき、電荷の保存則は ∂ μ j μ = 0 {\displaystyle \partial _{\mu }j^{\mu }=0} (3に対応) と表される。なお、4元ポテンシャルで表現すると、マクスウェル方程式は次の一つの方程式にまとめられる。 ◻ A μ − ∂ μ ∂ ν A ν = μ 0 j μ {\displaystyle \Box A^{\mu }-\partial ^{\mu }\partial _{\nu }A^{\nu }=\mu _{0}j^{\mu }} ここで、□はダランベルシアンである。 「古典電磁気学の共変定式」も参照
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