ショパン:ポロネーズ第5番 嬰ヘ短調
英語表記/番号 | 出版情報 | |
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ショパン:ポロネーズ第5番 嬰ヘ短調 | Polonaise fis-Moll Op.44 CT154 | 作曲年: 1840-41年 出版年: 1841年 初版出版地/出版社: Wien, Paris 献呈先: Princesse Charles de Beauvau née de Komar |
作品解説
【作曲】1840-41年
【出版】1841年にパリ(出版社:M. Schlesinger)、ヴィーン(出版社:P. Mechetti)で、翌42年にロンドン(出版社:Wessel & Stapleton)で出版
ショパンは1839年から46年のあいだ、多くの時間をフランスのノアンにあるジョルジュ・サンドの館で過ごしている。そこでショパンは、パリの喧噪を離れ、創作活動に集中することができた。1841年に完成したこのポロネーズは、ノアンで生まれた重要な作品の1つである。
ショパンはこの作品において、ポロネーズとマズルカという2つの舞曲??いずれもポーランドの主要な舞曲であり、ポーランドの精神を象徴するものである??を統合している。ショパンのポーランドへの想いは止みがたく、この時期に友人のフォンタナに充てた手紙のなかで、「ポーランドに帰れることがあるだろうか」(小松雄一郎訳)とも述べている。
この作品は、ショパンの親しい女友達デルフィーナ・ポトツカの妹である、シャルル・ド・ボーヴォ公爵夫人に献呈された。
作品全体は、以下のように三区分できる。
第I部:序奏(1-8小節)-A(9-26小節)-B(27-34小節)-A(35-52小節)-B(53-60小節)-A(61-78小節)-C(79-102小節)-B(103-110小節)-C(111-126小節)
第II部:D(127-260小節)
第III部:序奏(261-267小節)-A(268-285小節)-B(286-293小節)-A(294-326小節)
第I部と第III部はポロネーズで、序奏と3つの主題部分から構成されており、第II部はマズルカになっている。各部分は、対照的でありながらも連続性を持つように、バランスが計算されている。
第I部は、8小節の導入から始まる。両手のオクターヴのクレッシェンドはリストを思わせる力強いパッセージであり、この部分はfis-mollのドミナントとして主要主題を準備している。主要主題のA部分は、非常に力強い性格である。左手の跳躍、両手で行われる伴奏、低音部での装飾やトリルなどによって、非常に充実した強い響きが生み出される。このA部分は第I部で2度反復されるが、その度に変奏されて、力と勢いを増していく。B部分は短い副主題で、唐突に調性が変わるため、A部分との強いコントラストが生み出される。しかし構造的には、その後に来るA部分やC部分を準備する「アウフタクト」部分として見ることもできる。C部分の新しい素材は、リズミックな動機のあとにV度?I度の動きが続き、それが絶え間なく反復するものである。この部分ではa音のペダルが保たれ、それが次のA-durを準備している。
第II部で、あたかも夢のように挿入されるマズルカは、ポロネーズ部分のエネルギッシュな雰囲気とは対照的な性格である。しかし、優しい響きを作り出す3度和音はA部分との関連を作り出しており、この旋律型は序奏とも共通点を持っているのである。
第III部では、第I部が圧縮されて再現する。
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