ボッティチェッリの聖母
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/18 14:55 UTC 版)
「マニフィカートの聖母」の記事における「ボッティチェッリの聖母」の解説
ボッティチェッリが芸術的な様式の変化ではなく、作品の主題によって特徴づけられる、3つの異なる時期を経たことは広く認められている。これらの3つの時期のうち最初の時期に、画家は絵画全体を通して非常に穏やかで平均的な感情表現を維持したが、それは適切に「メディチの時期」と見なされている。この時期に、ボッティチェッリは別の大型の円形画、『ザクロの聖母』を含むいくつかの聖母像を描いた。それぞれは本質的に究極の母性を表したものであり、聖母の穏やかな母親としての愛は、彼女自身と幼子イエスとの間の優しい情感によって強調されることになった。ボッティチェッリは、自身の女性像、特に聖母を類まれな淡い色の磁器のような顔として描き、鼻、頬、口を淡いピンク色にして描いたことで有名である。ボッティチェッリの芸術のこの時期は、宮廷絵画に通常見られる特徴の組み合わせと、古典作品の研究から学んだ要素によって特徴づけられたものである。ボッティチェッリは、これらの準宮廷絵画の古典的な優雅さと、当時のフィレンツェの服装を併用している。 『ザクロの聖母』のように、本作の聖母は左手にザクロを持っている。本作に見られるザクロに関して決定的な議論は存在しないが、『ザクロの聖母』に見られるザクロは、解剖学的に正確な人間の心臓を表しているという議論が存在している。ザクロは、ペルセポネと、春に彼女が地球へ帰還することを象徴するものであるという異教の神話以降、芸術創造の時代を通してずっと象徴的に使用されてきた。キリスト教の導入により、この象徴としてのザクロは不死とキリストの復活を表すように進化した。さらに、その多くの種子のためにザクロはまた、出産の象徴にもなりうる。ザクロは、ルネサンス美術ではイエスの苦しみと復活の充実を表すためによく使用される。一部の専門家は、ザクロと心臓の解剖学的類似性に注目している。これは、イエスが肉体の形で経験した苦しみをさらに強調するものなのかもしれない。この類似性は、『マニフィカートの聖母』にも見られるが、ザクロの位置はキリストの心臓の下にある。一方、『ザクロの聖母』ではザクロの位置はキリストの心臓の真上にある。
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