フォーランド・ナットとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 固有名詞の種類 > 製品 > 武器・装備 > 兵器 > イギリスの戦闘機 > フォーランド・ナットの意味・解説 

フォーランド ナット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/16 19:07 UTC 版)

フォーランド・ナット
Folland Gnat

フィンランド空軍博物館英語版フィンランド語版のナットF.1

フォーランド ナット (Folland Gnat) はイギリスフォーランド・エアクラフト英語版社が開発した戦闘機および練習機1955年初飛行。

概要

1952年から開発が開始され、1954年8月にデモンストレーション機のミッジ(Midge)英語版が初飛行、1955年に機体が完成し初飛行を行った。戦闘機の高性能化に伴う機体の大型化、複雑化、高額化していく流れに反して、敢えて小型軽量の機体とし、安価で製作・取扱の容易な点に重点を置いて開発された。既存戦闘機と比べて、生産にかかる労力は1/5、価格は1/3を目指していた。

機体はエンジンを1基搭載し、パイロットが1名搭乗するオーソドックスな後退翼機で、主翼を高翼配置としている。エアインテークは機体両脇に設けられており、ノズルは機体後端にある。ジェット第1世代末期~第2世代に登場した機体ながら、かつてレシプロ戦闘機としても軽量化を追求していた旧日本海軍零戦と大差ない機体サイズや自重(零戦の後継機として試作された烈風よりは明らかに小型・軽量である)にまとめられている。そのため、エンジンとして同世代の戦闘機用としては比較的低出力なオーヒュースを搭載していた割には高速を発揮することができたが、水平飛行では音速を突破できなかった。

本機は運動性と取り扱いやすさは優れていたものの、前時代のレシプロプロペラ機なみに軽量・小型だったことが仇となり、武装の搭載量や航続距離が物足りないものとなった。このことからイギリス空軍では8機の試作発注を行ったものの、実戦部隊用の戦闘機としては採用しなかった。また、デ・ハビランド ベノムの後継戦闘爆撃機のテストにも応募したが、より大型・重武装のホーカー ハンターに敗れてしまった。

練習機型

イギリス空軍第4飛行訓練学校(No.4 Flying Training School RAF )のナットT.1

このように戦闘機としては採用されなかった本機だが、その後イギリス空軍では、Fo.114(後にナット T.Mk1に変更)の名称で練習機として1957年に採用した。練習機型は、戦闘機型と比べて胴体が0.64m延長されタンデム複座式となり、主翼は翼幅、弦長を増加し内翼にフラップ、外翼にエルロンを装備した。また、スリッパのようなややつぶれた形の増加燃料タンクが装備されるようになった。

戦闘機型同様、運動性に優れ操縦しやすい機体だったが、機体サイズの小ささ故にコクピットの居住性が悪いことが欠点で、大柄なパイロットはハンターで訓練を行わなければならなかった。1962年から訓練部隊に配備が開始され、105機生産された。空軍の曲技飛行隊であるレッドアローズの装備機としても有名で、1965年から1979年までの間本機が利用され、1979年にBAe ホークと機種交代して退役した。

海外での運用

イギリス空軍で採用されなかったナットは輸出に回され、フィンランドユーゴスラビアインドへ輸出された。フィンランドには1958年から1959年にかけて13機輸出され、1974年まで使用された。ユーゴスラビアは、新型の昼間戦闘機の候補とするため評価用に2機購入したが、結局それ以上の導入は行わなかった。

ナットが最も利用され且つ活躍したのはインド空軍においてであった。インド空軍は早くからナットに注目しており、初飛行の翌年には23機の輸入契約をしたほか、ライセンス生産の契約まで締結している。こうして、ナットは1959年11月からインド空軍への引き渡しが開始され、1960年から部隊配備が開始された。

ナットは第二次印パ戦争および第三次印パ戦争において、インド空軍の戦闘機として用いられた。優れた上昇性能と運動性能を武器に活躍し、パキスタン空軍F-86 セイバーを撃墜する戦果を挙げている。これは、本機が小型で高速だった上に戦闘地域の気候が高温だったために、当時のレーダーでは捕捉し辛く、またサイドワインダー等の短距離空対空ミサイルも回避可能だったからだといわれている。運動性のよい本機はパイロットの空戦技術向上のための格好の教材となり、第二次印パ戦争でナットに搭乗していたパイロットは、第三次戦争時において別の機体に搭乗してからも操縦技術の高さを発揮した。ライセンス生産バンガロールヒンドスタン航空機の工場で行われ、合計175機が生産された。さらにナットを独自に改良・発展させた型のアジートが開発・生産され、この型は1990年代まで生産された。

要目(ナットF.1)

出典: Folland Gnat - BAE Systems Heritage[1]

諸元

性能

  • 最大速度: 1,120km/h (695mph),マッハ0.98, 高度20,000ftの場合
  • 航続距離: 800km (500mi)
  • 実用上昇限度: 50,000ft (15,000m)
  • 上昇率: 100m/s
  • 離陸滑走距離: 670m (インターセプト装備)、1,150m (作戦装備)
  • 着陸滑走距離: 670m

武装

  • 固定武装: ADEN 30mm×2門 (各砲につき砲弾115発搭載)
  • ロケット弾: 3インチ(76.2mm)ロケット弾×18発
  • 爆弾: 500ポンド(227kg)爆弾×2発
使用されている単位の解説はウィキプロジェクト 航空/物理単位をご覧ください。

登場作品

ホット・ショット
架空の艦上機であるオスカー EW-5894ファルス戦術爆撃機として登場。

脚注

  1. ^ BAE Systems Heritage (2018年). “Folland Gnat” (英語). 2018年4月30日閲覧。

関連項目

  • アジート - ナットをもとにインドが開発した軽戦闘攻撃機。降着装置の補強や燃料タンクの拡張など各種の改良が施され、ハードポイントも追加されたが、実戦を経験することなく1991年に退役。
  • フィアットG.91 - イタリアで開発された同世代のジェット軽戦闘爆撃機偵察機。ナットと同様に軽量戦闘機として設計され、同系統のエンジンを搭載するが、機体は一回り大きく、航続距離や兵装搭載量も勝る。
  • ダグラスA-4 スカイホーク - 同世代のジェット艦上攻撃機。軽量の攻撃機として設計されたが、機体サイズや航続距離や兵装搭載量は、ナットやG.91よりさらに大きい。特に複座型のTA-4Jは、T-45 ゴスホークが配備されるまでアメリカ海軍艦上練習機として運用されていた。
  • ノースロップF-5/T-38 - 次世代のジェット軽戦闘機・練習機。本機はマッハ1台半ば~後半を発揮できる超音速機であるが、小型軽量で整備がしやすく安価というナットのコンセプトを踏襲している。

「フォーランド ナット」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「フォーランド・ナット」の関連用語

フォーランド・ナットのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



フォーランド・ナットのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのフォーランド ナット (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS