ファゴットパートの一部をバスクラリネットに置き換える演奏上の慣例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/13 20:58 UTC 版)
「交響曲第6番 (チャイコフスキー)」の記事における「ファゴットパートの一部をバスクラリネットに置き換える演奏上の慣例」の解説
第1楽章の一部(160小節の後半、譜例と試聴用サウンドファイル参照)で、ファゴットパートの4つの音をファゴットではなく編成外のバスクラリネットに演奏させることがしばしば行われる。バスクラリネットに置き換える理由としては、この部分に pppppp (ピアニッシシシシシモ)という極端な強弱記号が付されており、そのように小さな音で演奏するのはファゴットよりもバスクラリネットの方が適していること、またこの部分が同小節前半までのクラリネットの旋律を受け継ぐ形となっており、同族楽器のバスクラリネットで受け継ぐ方がファゴットで受け継ぐよりも音色的に旋律のつながりが良いことが挙げられる。 バスクラリネットが使用される部分(第1楽章154小節アウフタクトから160小節まで) お使いのブラウザでは、音声再生がサポートされていません。音声ファイルをダウンロードをお試しください。 青色で記した最後の4つの音は、しばしばファゴットに代えてバスクラリネットで演奏される。 しかしチャイコフスキーはオーケストレーションの手腕を高く評価された作曲家であり、前作の『くるみ割り人形』ではバスクラリネットを使用していることから、交響曲第6番のこの場面であえてバスクラリネットでなくファゴットを指定したのには、その極端な音量指定を含め、音楽的な理由があるとも考えられる。この160小節目が提示部の終わりに相当することから、序奏の冒頭と提示部の終わりを同じファゴットに演奏させて音色的な統一感を持たせることを意図した楽器指定なのではないかとの見解や、この曲においてクラリネットとファゴットはそれぞれ孤独と絶望を象徴しており、孤独が絶望に転じるという意味を持たせた旋律の受け継ぎなのではないかとの解釈などが存在する。 なおチャイコフスキーは1886年発表のマンフレッド交響曲ではバスクラリネットを起用しているが、番号が付与された交響曲6作品では、バスクラリネットだけでなく、イングリッシュホルンやコントラファゴットも一貫して用いていない。チャイコフスキー自身は作曲中の2月14日、甥のウラディミール・ダヴィドフへ宛てた手紙(ただし手紙にはユリウス暦8月3日という間違った日付が書かれている)において、「私はこの作品に満足しているが、まだ楽器の扱いについて不満な点が残っており思い通りにならない」と書いている。 ファゴットの4つの音のバスクラリネットへの置き換えを最初に行ったのは指揮者のハンス・リヒターだとされる。バスクラリネット以外の楽器に置き換える場合もあり、例えば指揮者の上岡敏之はコントラバスに演奏させている。
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