パナマ運河通航制限について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:51 UTC 版)
「大和型戦艦」の記事における「パナマ運河通航制限について」の解説
米国は太平洋と大西洋に挟まれているが、軍艦建造の造船所は大西洋側に集中しており、建造された新造艦は通常はパナマ運河を通って太平洋側に出る。パナマ運河を通航するには艦幅を110フィート(約33m)以内に納めなければならなかった。日本海軍は米国がその制約下で46cm砲搭載艦を建造した場合、9門搭載艦なら最大排水量50,000トン、10門搭載艦なら60,000トンでそれぞれ速力は23ノット、40.6cm砲搭載艦なら50,000トンで33ノットになると試算し、砲力と速力の総合で大和型が優位に立てると判断した。大和型に対応する十分な攻防走能力を与えた場合、運河は通行出来なくなると日本側は想定した。有力な艦船が運河を通行できない場合米海軍は、大西洋からの回航に南米回りの航路を使わざるを得ず、時間的な負荷がかかる。これは日本側に有利に働くと考えられた なお、アイオワ級戦艦計画時にも基準排水量45,494トン、全長243.8m、全幅32.9m、45.7cm47口径砲9門、速力27.5ノットの試案が存在し、これが実現した場合は日本側の予測を上回る結果になったはずである。もっとも全幅を32.9mに抑えているため、弾薬庫の必要幅の関係から、特に水中防御については大和型にかなり劣るものと考えられる(要目によれば垂直/水平装甲も制限のない大和型が優位)。なお実際にはバルジ装着で運河通航を断念したテネシー級戦艦や、運河拡幅を前提に計画されたモンタナ級戦艦(未成)が存在し、米国は当時のパナマ運河通航制限を絶対的なものと考えていた訳ではない。日本外務省も、アメリカが45,000トン級パナマ運河通行不能戦艦を建造する可能性について言及している。松本喜太郎(大和型設計者)は、大和設計着手当時、米国が太平洋と大西洋に別個の有力な艦隊を持つとは想像していなかったと述べている。
※この「パナマ運河通航制限について」の解説は、「大和型戦艦」の解説の一部です。
「パナマ運河通航制限について」を含む「大和型戦艦」の記事については、「大和型戦艦」の概要を参照ください。
- パナマ運河通航制限についてのページへのリンク