バクテリアルシフェラーゼ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/20 05:02 UTC 版)
「ルシフェラーゼ」の記事における「バクテリアルシフェラーゼ」の解説
バクテリアルシフェラーゼもまた、古くから知られている。 バクテリアルシフェラーゼは還元型のフラビンモノヌクレオチド(FMN)と単純な直鎖状アルデヒドが発光反応に関与する。アルデヒド合成酵素が欠損した発光バクテリア株を用いた実験で、炭素鎖14のテトラデカナールに特異的に強く発光することから、ミリスチル酸から還元反応で合成されるテトラデカナールが天然のバクテリアルシフェリンであることを明らかとされている。 バクテリアルシフェラーゼはまず、還元型FMNと結合し、分子状酸素との反応でペルオキシド中間体を生成する。次に直鎖状アルデヒドがペルオキシド中間体との反応でペルオキシヘミアセタールとなる。このペルオキシヘミアセタールの分解で、励起分子が生成される。この励起分子の蛍光極大波長が、バクテリアルシフェラーゼの発光極大波長である490 nmと一致した。発光反応の生成物である脂肪酸や酸化型FMNは、還元酵素により還元され、再利用される。 1955年に精製され、1972年には、ルシフェラーゼは沈降係数から、αとβのサブユニットからなるヘテロ二量体であることが確認されている。αとβはそれぞれ40、37 kDa程度である(由来する発光バクテリア種により、多少異なる)。 ルシフェラーゼをプロテアーゼ処理すると、活性がなくなることが報告され、この際にαサブユニットが切断されている事が確認されている。すなわち、活性中心はαサブユニットに存在することが推定された。 2009年にFMNとの複合体結晶が得られ、構造解析がなされた(Biochemistry誌)。その結果、活性部位はαサブユニットに存在することが証明された。 バクテリアルシフェラーゼには、発光反応中にルマジンタンパク質(LumP)やYFP(オワンクラゲ由来GFPの改変タンパク質ではない)といった蛍光タンパク質が存在することで、それぞれ発光色が緑から、青(LumP存在時)あるいは黄色(YFP存在時)に変調することが知られている。しかし、その詳細なメカニズムは知られていない。 発光バクテリアにおいて、ルシフェラーゼは自己誘導と呼ばれる特徴的な合成方法をとっている。発光バクテリアは、互いに存在を認識するためにオートインデューサーと呼ばれる伝達物質を産生している。このオートインデューサーは、バクテリアが増殖している間に、培地に蓄積する。そして、オートインデュサーがある濃度を超えると、バクテリアは菌体数が増えたことを察知し、ルシフェラーゼの誘導が起こる。 このように、ある能力を発揮する際に、密度依存性がある機構をクオラムセンシングと呼び、発光バクテリアだけでなく、様々な細菌に見られる特徴である。
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