ネメシス仮説の発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/12 08:59 UTC 版)
「ネメシス (仮説上の恒星)」の記事における「ネメシス仮説の発展」の解説
Daniel P. WhitmireとAlbert A. Jackson、 Marc Davisとピート・ハットとRichard A. Mullerのそれぞれ独立した2つの研究グループが、大量絶滅の周期性に関するRaupとSepkoskiの説を説明する同様の仮説を同じ号のネイチャーに投稿した。この仮説では、太陽の周りを楕円軌道で公転する未発見の伴星があり、この伴星が周期的にオールトの雲を乱し、その結果として内太陽系に飛来する彗星の数を大幅に増加させ、地球への天体衝突につながったとしている。この仮説が後に「ネメシス仮説」または「死の星仮説」として知られるようになった。 もしこのような伴星が存在したとしても、ネメシスの正確な性質などは不明である。Mullerは、ネメシスは見かけの明るさが7等級から12等級くらいの赤色矮星である可能性が最も高いとしているが、WhitmireとJacksonは褐色矮星であると主張した。赤色矮星であればこれまでの星表に掲載されているはずだが、太陽を公転しているので固有運動がとても小さくなり、9等級のバーナード星の固有運動(バーナード星の固有運動が初めて記録されたのは1916年)を記録できたような過去の固有運動観測による検出ができないため、年周視差の測定でしかその存在を確認できない。Mullerは、ネメシスが10等級より明るければ年周視差測定でネメシスを発見できると期待している。 最後の大量絶滅が約1100万年前に起きたことから、Mullerはネメシスが太陽から約95,000 au(約1.5光年)離れた軌道長半径を持つと仮定し、Mullerの仮説の詳細を満たすOrbital arc(直訳すれば「軌道弧」の意)を描いて公転する、多数の公転周期が不定な長周期彗星の本来の近日点に由来する仮説上の軌道を基に、ネメシスはうみへび座の近くに見えると推定した(1987年のYarrisによる研究でも支持されている)。Mullerのネメシス仮説に関する最も最近の論文は2002年に出版された。2002年にMullerは、4億年前にネメシスが近くを通過した恒星によって円軌道から軌道離心率0.7の楕円軌道へと軌道を乱されたと推測している。 2010年と2013年には、MelottとBambachは2700万年の周期で絶滅率が過剰に大きくなることを示す信号の証拠を発見したと発表した。しかし、ネメシスは太陽から非常に離れているので、近くを別の恒星が通過することで摂動の影響を受けることが予想されるため、公転周期は15~30%ほど変化するはずだとされている。したがって、約2700万年周期に見られる急激な絶滅率のピークはネメシスの存在とは矛盾している。
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