ダムによらない治水の検討
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/13 13:53 UTC 版)
「川辺川ダム」の記事における「ダムによらない治水の検討」の解説
川辺川ダムの建設が中止となった2009年以降、球磨川水系を管理する国土交通省は、川辺川ダム以外の治水対策の現実的な手法について「極限まで検討し、地域の安全に責任を負う者の間で認識を共有する場」として国・県・流域市町村による「ダムによらない治水を検討する場」を設け、12回にわたって検討を行ったが、ダム以外に検討されうる「直ちに実施する対策」による治水手法では実施後に得られる治水安全度が現状よりは向上するものの、(ダム建設を前提とした)河川整備基本方針で想定した「80年確率」より明らかに低い「5年確率」ないし「10年確率」にならざるを得ないことが示されたことに住民説明会での懸念が相次ぎ議論がまとまらなかったことも踏まえ、2015年に「検討する場」を終了させ、新たに「球磨川治水対策協議会」を開催し、以下の9つの治水案を示した。 中流部(八代市、芦北町、球磨村)・上流部(相良村、錦町、あさぎり町、多良木町、湯前町、水上村)において大規模な引堤(堤防をセットバックし河川そのものを拡幅する)を実施する。 中流部・上流部において大規模な河道掘削を行う。 中流部・上流部において堤防の嵩上げを行う。 中流部・上流部に複数の遊水池を設ける。 市房ダムを再開発する。 五木村・相良村から八代市・球磨村にかけて放水路を建設する。 流域の保全・流域における対策を実施する。 宅地のかさ上げ等を実施する。 輪中堤を建設する。 しかし、一つの案で治水対策が完結しないことから複数の案を組み合わせを検討する必要があり、現実的な組み合わせ10案の中で最も安い「堤防嵩上げを中心対策案とした組み合わせ」でも(ダムの残事業費を大幅に上回る)2800億円を要し、最短で効果を発現する放水路建設案でも45年の工期が見込まれること、さらには「清流川辺川を守る県民の会」などの市民団体が(住民説明会ではなく)パブリックコメントを実施したことに強く抗議し、球磨川水系の既存4ダム(荒瀬ダム・瀬戸石ダム・幸野ダム・市房ダム)の撤去を引き続き主張するなど、案がなかなかまとまらず、9回の議論を経て令和になっても、球磨川水系の河川整備計画が策定できない状況が続いている。 2020年(令和2年)1月1日現在で一級水系で河川整備計画が策定されていないのは球磨川水系と新宮川(熊野川)水系だけである。なお、河川整備計画が策定されない中でも、国及び県は球磨川・川辺川で河道掘削・護岸補強など局所的な防災対策を継続して実施していた。
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