セイヴァリ機関の改良
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/10/23 20:28 UTC 版)
「トーマス・セイヴァリ」の記事における「セイヴァリ機関の改良」の解説
1718年に ジョン・デサグリエ は、セイヴァリ方式を改良した機関を作った。彼は、セイヴァリ機関では、レシーバー内の冷水を蒸気で押す時に大量に凝縮して、大きな無駄が生じていることを突き止め、ボイラの圧力の低下を抑えて、水の排出に要する時間を短くする工夫を行った。レシーバーを一個だけとし、さらにボイラとレシーバーの最適な容積比を求めた。 また蒸気を凝縮するための冷水を、レシーバーの外面でなく、レシーバーの内の蒸気中へ直接噴射するように改良した。 安全弁は既にパパンにより発明されていたが、セイヴァリは用いようとせず、セイヴァリ機関は破裂事故をたびたび起こしていた。デサグリエは、ボイラに安全弁を取り付けた。デサグリエによる改良機関を右図に示す。 銅製の円筒形レシーバー A: 底部は吸い込み・吐き出し管の弁 F と G の間に繋がり、頂部は蒸気コック D K により蒸気管 C と噴射コック M に繋がる。 銅製の球形ボイラ B:レシーバーの容積の5倍以上の容積が必要。火炎がボイラを取り囲むように流れる。ボイラ頂部の銅カバーには水面計ゲージ N O、安全弁 P がある。 蒸気コック D とハンドル K: ハンドルを C の方向へ回すと蒸気が入り、M の方向へ回すと 蒸気を止めて M から冷水が入る。両者の中間ではどちらも遮断される。 弁 F G : 上方の栓 I のネジを外して容易に取り出して検査できる。 デサグリエは1718年以降に、これらの改良機関を7台建造した。その中には、ロシア帝国のピョートル1世のために建造したものも含まれており、いずれも、庭園等への給水用のものであった。彼は、揚程を高くすることも吐出し量を大きくすることもしようとはしなかった。当時普及し始めていたニューコメン機関と比較すると、小規模な用途では、改良したセイヴァリ機関の方が適していると述べている。 セイヴァリ機関の中には、水車と組み合わせて、水量の得られない場所での動力源として用いられたものもあった。この場合は、水車の回転で機関の弁操作を自動化することが容易であり、当時のランカシャーのマンチェスターや他の場所で、初期の大規模工場や綿花工場機械設備を動かすために建造されて、何年も使用され続けた。 右図は、Joshua Rigley がロンドンの Mr. Kier の大規模工場で、旋盤などを回すために建造した機関の中央断面図を示す。その構造と動作の概略は次のようになる。 B はボイラで、水槽 R に繋がる管(図略)から給水し、ボイラ内のフロートと弁で、ボイラの水位を一定に保つ。 蒸気は管 C によりレシーバー上部のボックス D に送られ、弁が開けば円筒形のレシーバー A に入る。弁は軸 K と T を介して水車 W の回転で開閉される。 レシーバー上部には冷水を噴射するノズルがあり、水車の木の車 T で駆動されるブランジャーポンプで冷水を噴射する(図略)。 レシーバー A は下部水槽 H から水を吸い上げ、上部水槽 R へ重力で排水する。水は上部水槽の水門を通って水車 W のバケットの中へ流れて水車を動かす。バケットを出た水は、再び下部水槽へ落ちる。水が循環して水温が上がるのを抑えるための巧妙な工夫(図略)もされている。 水車の軸 S の端に取り付けた木の車 T のクリート a b c d により蒸気弁 D を開閉し、ブロック e f g h によりシリンダ内への水噴射を制御する。 このような機関は、石炭が安価に手に入る所では有効に使用された。
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