スーパーファントム・プロジェクト
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/15 06:07 UTC 版)
「F-4 (戦闘機)」の記事における「スーパーファントム・プロジェクト」の解説
1983年にボーイング社は比較的酷使されていないF-4に、当時の最新技術を投入し改修する計画、スーパーファントムを発表した。 当時、2,700機近くが運用されていたF-4は2000年においても2,000機近くが飛行可能と予測されていた。また、21世紀の空戦は早期警戒管制機とのデータリンクや当時はまだ開発段階だった撃ちっ放し能力を有するAIM-120 AMRAAM空対空ミサイルの実用化など、F-4の開発された時代では想定されていない技術が前提となるとされた。この予測を基に、主にレーダーなどのアビオニクス及びエンジンの換装、コンフォーマル・フューエル・タンクの追加が計画された。 レーダー類はウエスチングハウス社製「AN/APG-66」へ換装してルックダウン能力(低高度目標の捕捉能力)とシュートダウン能力(低高度目標の撃墜能力)向上を図った。合わせてコックピット計器類もスペリー社製多機能ディスプレイ(MFD)や、GEC製HUD等F-16のものに換装され、慣性航法装置(INS)にはF-20用に開発されたハネウェル社製423(リングレーザージャイロ方式)が搭載予定であった。 エンジンはF-15やF-16が搭載するプラット・アンド・ホイットニー F100を改良したプラット・アンド・ホイットニー PW1120(アフターバーナー推力 9.5t)へ換装するとした。このエンジンはJ79に比べ25%近く軽量で推力は20%増し、燃料消費率も5%から15%低いとされた。胴体下面に搭載するコンフォーマル・フューエル・タンクは4,164Lの燃料を追加搭載でき、後端部のフェアリングにはAN/ALE-40チャフ・フレアディスペンサーが装備されていた。さらにCFTに4箇所のハードポイントが設けられ、うち2箇所にAIM-7を装着可能となっていた。 この計画には当時200機近いF-4を保有していたイスラエルや約260機保有していた西ドイツが興味を示したとされている。ただし、両国ともこのボーイング社案をそのまま使用してはいない。イスラエルはエンジンこそPW1120を搭載するもののHUDを含むアビオニクス類は国産品を搭載する独自計画「F-4Eクルナス2000」(後述)を立案した。西ドイツは本計画に対抗する形で「ICE(Improved Combat Efficiency:戦闘効率改善)計画」(後述)を立案した。 空軍航空システム部門は1986年2月にボーイング社の改修計画の続行を承認したが、これらの機能をF-4ファントムIIに付加するには多大なコストを必要としたことから採用国からの発注はなかった。また、1991年のソ連崩壊とワルシャワ条約機構消滅により、計画は立ち消えとなった。
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