スギ溝腐病
和名:スギ溝腐病 |
学名:(病原菌)Cercospora sequoiae Ellis et Everhart |
分布: |
写真(上):変形した樹幹 |
写真(下):変形した樹幹の断面 |
説明 病原はスギ赤枯病と同一であり,糸状菌の一種で不完全菌類に属する。赤枯病罹病苗木が植栽されることによって林地で発生する病気である。スギ赤枯病の胴枯型病斑(緑色主軸の針葉や小枝の基部にできる病斑)が治癒しないと,木の成長にともない患部は溝状を呈するため溝腐病と呼ばれる。苗木時代の赤枯病病斑のほか,林内の他の木や植栽後に成長した部位への感染(林内感染)も起こる。病原菌は患部で長期間生存し,若い時期に感染した患部がいつまでたっても治癒しないで残るため,樹幹は著しく変形し,また材変色が生じる。防除には,苗畑での赤枯病防除を徹底すること,植栽後に胴枯型病斑が見つかった造林木は伐採除去することが必要である。 |
杉の溝腐病
(スギ溝腐病 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/05 06:16 UTC 版)
杉の溝腐病(すぎのみぞくされびょう)は、杉にとって深刻な樹病の1つである。病気にかかっていると植栽後20年程度で幹に特徴的な溝が現れる[1]。
赤枯病
病原体はスギの苗畑病害を起こすことで知られるスギ赤枯病菌(Passalora sequoiae、旧学名Cercospora sequoiae)と同一である[2]。幹に現れる窪みは深く屈曲した溝になることが特徴[1]。
防除法としては、赤枯病に感染した苗を林地などに植栽しないことが重要である。
非赤枯性溝腐病
千葉県特産の山武杉には赤枯病菌によらない溝腐症状があり非赤枯性溝腐病と呼ばれる[1]。幹に現れる窪みは縦にまっすぐで白色腐朽となり黄褐色雲形の帯線が現れることが特徴[1]。1960年に茨城県で赤枯病の症状とは異なる腐朽被害が初めて確認され非赤枯性溝腐病と命名された[1]。
病原体は担子菌に属するチャアナタケモドキである[1](学名Phellinus punctatusと同種とされてきたが遺伝子情報の分析でFomitiporia torreyaeと同定された[1])。この病気による被害は全国的ではなく、千葉県と茨城県の一部に限られる。2019年の令和元年房総半島台風(台風15号)による千葉県での停電被害の拡大の背景には、林業の衰退によるスギ非赤枯性溝腐病の蔓延による相次ぐ倒木の発生があるともいわれている[3]。
出典
- ^ a b c d e f g 幸・寺嶋・岩澤・福島・遠藤「非赤枯性溝腐病と病原菌チャアナタケモドキに関する最近の知見」 千葉農林総研研報 2019年9月24日閲覧。
- ^ 高畑義啓「戦前期の九州地方で発生していたスギ赤枯病とその対策と実態」(九州の森と林業 No.129) 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 森林総合研究所九州支所、2022年8月21日閲覧。
- ^ スギの病、倒木を拡大か 停電の千葉「まるで終戦直後」 朝日新聞 2019年9月23日付
関係記事
外部リンク
- “森林生物データベース 00080 スギ溝腐病”. 森林生物データベース. 国立研究開発法人 森林研究・整備機構. 2019年10月13日閲覧。
- “スギ溝腐れ病”. 森林総合研究所 九州支所. 国立研究開発法人 森林研究・整備機構 (2015年7月10日). 2019年10月13日閲覧。
- 千葉県森林審議会 サンブスギ溝腐病対策について 千葉県公式サイト
- 田中淳夫. “千葉大停電の遠因か。倒木処理の難しさと山武杉の悲劇を振り返る”. Yahoo!ニュース. 2019年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年9月18日閲覧。
スギ溝腐病と同じ種類の言葉
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