スカラー場の面積分
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/05 07:50 UTC 版)
曲面 S とその上で定義されたスカラー場 f を考える。S が何らかの物質でできていて、S の各点 x において物質の密度が f(x) であるものと考えるならば、S 上の f の面積分は S の単位厚さあたりの質量を与える(もちろんこれは、曲面を無限に薄い立体と看做した場合にのみ正しい)。つまり、面積分を計算する一つの方法論は、曲面を非常に小さい無数の小片に分割し、その各小片の密度は近似的に定数であると仮定して、各小片についてその面積と密度とを掛けて単位厚さあたりの質量を求め、それらをすべて足し上げて得られる数として S の単位厚さあたりの総質量を求めればよいということになる。 面積分の明示式を得るには、(球面上の経線と緯線のように)S の上に曲線座標系を取るための媒介変数が必要である。そのような媒介変数表示を x(s, t) と書いて (s, t) が座標平面の適当な領域 T を動くものとすると、面積分は ∫ S f d S := ∬ T f ( x ( s , t ) ) | ∂ x ∂ s × ∂ x ∂ t | d s d t {\displaystyle \int _{S}f\,dS:=\iint _{T}f(\mathbf {x} (s,t))\left|{\partial \mathbf {x} \over \partial s}\times {\partial \mathbf {x} \over \partial t}\right|ds\,dt} と定義される。ただし、右辺の縦棒で挟まれた式は x(s, t) の二種類の偏微分同士の交叉積のノルム(大きさ(英語版))である。 例えば、一般の函数 z = f(x, y) で与えられる曲面の表面積を求めるなら、r = (x, y, z) として A := ∫ S d S = ∬ T | ∂ r ∂ x × ∂ r ∂ y | d x d y {\displaystyle A:=\int _{S}\,dS=\iint _{T}\left|{\partial \mathbf {r} \over \partial x}\times {\partial \mathbf {r} \over \partial y}\right|dx\,dy} を計算することになる。このとき、 ∂ r ∂ x = ( 1 , 0 , f x ( x , y ) ) , ∂ r ∂ y = ( 0 , 1 , f y ( x , y ) ) {\displaystyle {\partial \mathbf {r} \over \partial x}=(1,0,f_{x}(x,y)),\quad {\partial \mathbf {r} \over \partial y}=(0,1,f_{y}(x,y))} であるから、代入して整理すれば A = ∬ T ( ∂ f ∂ x ) 2 + ( ∂ f ∂ y ) 2 + 1 d x d y {\displaystyle A=\iint _{T}{\sqrt {\left({\partial f \over \partial x}\right)^{\!\!2}+\left({\partial f \over \partial y}\right)^{\!\!2}+1}}\ dx\,dy} を得る。これが一般の函数で与えられた曲面の曲面積に対するよく知られた公式である。式中で偏微分のクロス積として得られるベクトル ( − ∂ f ∂ x , − ∂ f ∂ y , 1 ) {\displaystyle \left(-{\frac {\partial f}{\partial x}},-{\frac {\partial f}{\partial y}},1\right)} は、この曲面の法線ベクトルとして理解することができる。 上記の公式にはクロス積が現れているから、この公式は曲線が三次元空間に埋め込まれているときのみ有効であることに注意。
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