スカラー部とベクトル部
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/09 07:36 UTC 版)
四元数 a + bi + cj + dk について、特に b = c = d = 0 であるものは実数体上のスカラーである。bi + cj + dk で、b, c, d の内少なくとも一つが、0 でないもの (bcd ≠ 0) を純虚 (pure imaginary) という。 四元数 a + bi + cj + dk に対して、a をその実部 (real part) またはスカラー部 (scalar part) といい、bi + cj + dk をその虚部 (imagenary part) または ベクトル部 (vector part) という。四元数のスカラー部は実数であり、ベクトル部は 0 または純虚である。任意の四元数は4次元ベクトル空間のベクトルではあるけれども、ここではベクトルあるいはベクトル元という言葉を、専ら純虚四元数を指すのに用いる。この規約の下、ベクトル元ということはベクトル空間 R3 の元ということと同じ意味になる。 ハミルトンは純虚四元数を right quaternion(「正しい四元数」)と呼び、実(四元)数を scalar quaternion(「スカラー四元数」)と呼んだ。 四元数をスカラー部とベクトル部に分解して q = ( r , v → ) ( q ∈ H , r ∈ R , v → ∈ R 3 ) {\displaystyle q=(r,{\vec {v}})\quad (q\in \mathbb {H} ,\,r\in \mathbb {R} ,\,{\vec {v}}\in \mathbb {R} ^{3})} と表すと、加法、乗法の定義式は ( r 1 , v → 1 ) + ( r 2 , v → 2 ) = ( r 1 + r 2 , v → 1 + v → 2 ) {\displaystyle (r_{1},{\vec {v}}_{1})+(r_{2},{\vec {v}}_{2})=(r_{1}+r_{2},\;{\vec {v}}_{1}+{\vec {v}}_{2})} ( r 1 , v → 1 ) ( r 2 , v → 2 ) = ( r 1 r 2 − v → 1 ⋅ v → 2 , r 1 v → 2 + r 2 v → 1 + v → 1 × v → 2 ) {\displaystyle (r_{1},{\vec {v}}_{1})(r_{2},{\vec {v}}_{2})=(r_{1}r_{2}-{\vec {v}}_{1}\cdot {\vec {v}}_{2},\;r_{1}{\vec {v}}_{2}+r_{2}{\vec {v}}_{1}+{\vec {v}}_{1}\times {\vec {v}}_{2})} となる。ここで "⋅" はベクトルのドット積、"×" はベクトルのクロス積である。特に、実部が 0 の四元数に対しては ( 0 , v → 1 ) ( 0 , v → 2 ) = ( − v → 1 ⋅ v → 2 , v → 1 × v → 2 ) {\displaystyle (0,{\vec {v}}_{1})(0,{\vec {v}}_{2})=(-{\vec {v}}_{1}\cdot {\vec {v}}_{2},\;{\vec {v}}_{1}\times {\vec {v}}_{2})} が成り立つ。
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