シュタイン多様体の性質と例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/24 14:45 UTC 版)
「シュタイン多様体」の記事における「シュタイン多様体の性質と例」の解説
標準的な複素空間 C n {\displaystyle \mathbb {C} ^{n}} はシュタイン多様体である。 C n {\displaystyle \mathbb {C} ^{n}} 内のすべての正則領域はシュタイン多様体である。 シュタイン多様体のすべての閉複素部分多様体もまたシュタイン多様体であることは、容易に示すことが出来る。 シュタイン多様体に対する埋め込み定理は次のものである:複素 n {\displaystyle n} 次元のすべてのシュタイン多様体 X {\displaystyle X} は、双正則固有写像によって C 2 n + 1 {\displaystyle \mathbb {C} ^{2n+1}} に埋め込むことが出来る。 これらの事実よりシュタイン多様体は、(埋め込みが双正則であるために)複素構造が全体空間(英語版)のものと等しい、複素空間の閉複素部分多様体であることが分かる。 複素 1 次元において、シュタインの条件は次のように簡易化できる:ある連結リーマン面がシュタイン多様体であるための必要十分条件は、それがコンパクトでないことである。これはベーンケとシュタインによって、リーマン面に対するルンゲの定理の変形版を利用することで証明された。 すべてのシュタイン多様体 X {\displaystyle X} は正則分離である。すなわち、すべての点 x ∈ X {\displaystyle x\in X} に対して、 x {\displaystyle x} のある開近傍に制限されたときに局所座標系を形成するような、 X {\displaystyle X} 全体で定義される n {\displaystyle n} 個の正則函数が存在する。 シュタイン多様体であることは、(複素)強擬凸多様体であることと同値である。この後半の条件は、擬凸(あるいは多重劣調和)なエグゾースチョン函数が存在することを意味する。但しそのような函数は、 i ∂ ∂ ¯ ψ > 0 {\displaystyle i\partial {\bar {\partial }}\psi >0} を満たす X {\displaystyle X} 上の(モース函数と仮定されることもある)ある滑らかな実函数 ψ {\displaystyle \psi } で、すべての実数 c {\displaystyle c} に対して部分集合 { z ∈ X , ψ ( z ) ≤ c } {\displaystyle \{z\in X,\psi (z)\leq c\}} が X {\displaystyle X} 内でコンパクトとなるようなものである。これはいわゆる、エフジェニオ・エリア・レヴィ(英語版)(Eugenio Elia Levi) (1911) にちなんで名付けられたレヴィ問題の解でもある。この函数 ψ {\displaystyle \psi } は、境界がシュタイン領域と呼ばれるような対応するコンパクト複素多様体のクラスに対する、シュタイン多様体の一般化を与えるものである。シュタイン多様体は原像 { z | − ∞ ≤ ψ ( z ) ≤ c } {\displaystyle \{z|-\infty \leq \psi (z)\leq c\}} である。以上のことから、研究者によってはこの多様体のことを狭義擬凸多様体(strictly pseudoconvex manifold)と呼ぶこともある。 上述の項目と関連して、複素 2 次元の場合、同値かつより位相的な別の条件として次のものが存在する:ある複素曲面 X がシュタイン多様体であるとは、その臨界点を除いて原像 Xc = f−1(c) への複素 tangency の場が、 f−1(−∞,c) の境界としての通常の向きと一致する Xc 上の向きを導く接触構造(英語版)であるような X 上のある実数値モース函数 f が存在することを言う。すなわち、f−1(−∞,c) は Xc の Stein filling である。 このような多様体の更なる特徴付けは多く存在し、特に複素数に値を取る多くの正則函数を持つという性質が挙げられる。例えば層コホモロジーに関連するカルタンの定理 A, Bを参照されたい。第一の動機は、解析函数の(極大)解析接続の定義域の性質を表現することであった。 類似の概念が多く存在する GAGA において、シュタイン多様体はアフィン多様体に対応する。 シュタイン多様体はある意味において、複素数からそれ自身への「多くの」正則函数を許すような複素解析学における楕円多様体(elliptic manifold)の対となるものである。シュタイン多様体が楕円型であるための必要十分条件は、それがいわゆる正則ホモトピー論(holomorphic homotopy theory)の意味での fibrant であることであることが知られている。
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