モース理論
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微分トポロジーにおいて、モース理論(モースりろん、英: Morse theory)は、多様体上の微分可能函数を研究することにより、多様体の位相的性質の分析を可能とする。マーストン・モース (Marston Morse) の基本的な見方に従うと、多様体上の典型的な微分可能函数はその位相的性質を極めて直接的に反映する。モース理論は、多様体上のCW構造やハンドル分解を見つけたり、多様体のホモロジーの本質的な情報を与えたりすることができる。
モース以前は、アーサー・ケイリー (Arthur Cayley) とジェームズ・クラーク・マクスウェル (James Clerk Maxwell) がトポグラフィーの文脈で、モース理論のいくつかのアイデアを考え出した。モースの元来の応用は、測地線の理論(経路上のエネルギー汎函数の臨界点を調べる理論)への応用であった。これらのテクニックは、ラウル・ボット (Raoul Bott) の周期性定理の証明に使われた。
モース理論の複素多様体での類似が、ピカール・レフシェッツ理論である。
基本概念

説明のために、山がちな地形 M を考える。函数 f : M → R を M 上の各点の高さを表す写像とすると、R 上のある点の逆像は単純に等位集合(等高線)となる。各々の等高線の連結成分は、点、閉曲線、二重点(double point)などになる。点は山頂または窪地に、二重点は鞍点(saddle point)に対応する。ここで鞍点とは、稜線と谷間が交差する点のことである(右図の赤い点)。等高線はより高次の点(三重点など)を含むかもしれないが、これらは少しの変形で消せるか、または二重以下の点の組み合わせに解消できる。言い換えると、三重以上の点が現れるのは極めて稀ということである。

この地形を水に浸すことを想像してみる。水が高さ a へ到達すると、水でひたされている領域は f−1(−∞, a] 、つまり高さが a 以下の地点となる。次に、水位を上げていったときこの水面のつながりがどのように変化するか考えてみよう。直感的には、a が臨界点(critical point)を超えない限りは変化しないように思える。ここで臨界点とは、f の勾配が 0 となる点(より一般には、f のヤコビ行列が最大ランクを持たない点)である。言い換えると、水位が下記の点に達するときに、水面のつながり方が変化する。
- (1) 水を図形に充填し始めたとき (窪地)
- (2) 水位が鞍点に達したとき (峠)
- (3) 完全に図形が水没したとき (山頂)

これら 3つのタイプの臨界点 – 窪地、峠、山頂 (または極小点、鞍点、極大点とも言う) – に対し、指数を割り付ける。直感的に言うと、その点の周りで f が減少する独立した方向の数を、臨界点 b の指数とする。二次元面を考えている今の場合、極小点、鞍点、極大点の指数はそれぞれ 0, 1, 2 となる。厳密には、臨界点の指数は、その点でのヘッセ行列の作用が負定値となるような最大部分空間の次元である。
より一般の面 M を考えよう。Ma を f−1(−∞, a] で定義する。さきの例と同様に、Ma のトポロジーがどのように a の増加に対し変化するのかを分析できる。例えば M が右図のように立ったトーラスで、 f が垂直軸への射影とすれば、f は平面の上の高さを表す。


トーラスの下の端から順に、p, q, r, s を指数がそれぞれ 0, 1, 1, 2 である臨界点とする。a が 0 より小さいときは、Ma は空集合である。a が p の高さを通り過ぎた後、0<a<f(q) のときに、Ma は空集合に繋がる点(0-cell)にホモトピー同値な円板になる。次に、a がレベル q を超えた f(q)<a<f(r) のとき、Ma は円筒状となり、(左に図示するように)1-cell (線分)がくっついた円板にホモトピー同値となる。さらに a がレベル r を超え f(r)<a<f(s) となると、Ma は円板がくりぬかれたトーラスとなり、(右に図示するように)1-cellがくっついた円筒にホモトピー同値となる。 最後に、a が臨界レベル s よりも大きくなると、Ma はトーラスとなる。これも、円板がくりぬかれたトーラスに 2-cellである円板をくっつけたもの、と言える。
従って、次のようなルールを持っているように思われる。Mα のトポロジーは、α が臨界点の高さを通過しない限り変化しない。そして指数 γ の臨界点を通るときに γ-cell がくっつけられる。このルールは複数の臨界点が同じ高さにある場合については何も言えないが、そうした状況は f を少し摂動させることで回避できる。図形(あるいは、ユークリッド空間へ埋め込まれた多様体)の場合には、この摂動は図形を傾ける(座標系を回転させる)というシンプルな操作になるだろう。
注意として、このルールは臨界点が非退化であることが前提となっている。このことを理解するために、M = R で f(x) = x3 を考えよう。x=0 は f の臨界点であるが、Mα のトポロジーは α が 0 を通過しても変わらない。原因は f''(0) = 0 つまり x=0 での f のヘッセ行列(今は M が一次元のため、単に f の二回微分)が 0 であることにある。このような点を退化した臨界点という。この退化した臨界点は、例えば座標系を少し回転させるだけで消えてしまうか、または、2つの非退化な臨界点へ分解してしまう。
形式的な拡張
微分可能多様体 M の上の実数に値を持つ滑らかな函数 f : M → R に対し、f の微分が 0 となるような点を f の臨界点(critical points)と言い、f による像は臨界値(critical value)と言う。臨界点 b で 2階偏微分の行列(ヘッセ行列)が非特異ならば、b を非退化な臨界点と言い、ヘッセ行列が特異であれば、b を退化した臨界点と言う。
再び一次元 (M = R) の例を考える。R から R への函数
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