ケージ装甲
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 01:16 UTC 版)
柵状や格子状の増加装甲であり、車両の周囲(特に防護したい部分に限定的に装着される事も多い)に装着し、成形炸薬弾(HEAT)を用いる対戦車兵器、特にRPG-7による攻撃を無力化する目的で取り付けられた装甲である。増加装甲としては極めて安価で軽量であり、板状の増加装甲に比べれば視界の阻害も最小限度に抑えることができる。“ケージ装甲”(ケージ・アーマー, 英語:Cage Armour:「鳥篭装甲」の意)の他、バー・アーマー(Bar Armour)、スラット・アーマー(Slat armor)、フェンス装甲(Fence Armour)など、いつかの呼び名があるが、英語や日本語の表記での定まったものはない。 耐弾のメカニズムとしては、飛来した弾頭を車両本体に命中する前に柵の隙間や格子に挟み込み、信管が本装甲に激突して起爆することを妨害と共に、弾頭もしくは信管の損傷を発生させて不発もしくは不完全作動(炸薬が起爆しても設計通りの状態・威力で炸裂しない)とさせることを目的とするもので、特に、RPG-7の圧電式信管の作動を不完全にさせて起爆を回避するものである。多くのものではRPG-7の弾頭(単弾頭型で75~95mm、タンデム弾頭型で64+105mm)が素通りしないような間隔になっている。 この装甲について広まっている誤解として「本装甲より離れた場所でHEAT弾頭を起爆させ、スタンドオフを狂わせることにより侵徹力を減退させるため」というものがあるが(空間装甲と同様の存在であると捉えたもの)、これは誤りで、実際にはケージ装甲はHEAT弾頭の起爆を阻止するために開発されたものである。厚い装甲を持つ戦車に装着されるものではその効果(中空装甲効果)を考慮しているものもあるが、通常、ケージ装甲によって作られる本装甲との空間は250mm程度であり、仮にこれを1,000mmに増してもPG-7V(RPG-7の弾頭の一種)の場合まだ40mmの侵徹力を残しており、これはこの装甲を装備するほとんどの車両の本体装甲厚以上で、増加装甲としての充分な防護が得られない。また、軽装甲もしくは非装甲の車両では、そのように弾頭を起爆させた場合ごく至近距離で弾頭が炸裂するため、装甲を貫通されなくても相応のダメージを受けることになってしまう。このため、ケージ装甲の第一の目的は、命中した弾頭の作動を妨害することである。 ケージ装甲は成形炸薬弾以外にはほとんど効果がなく、大きな撃角では柵や格子の見かけ上の間隔が狭くなるため、装甲の表面で起爆する可能性が高くなり、起爆回避の成功率は60%程度とされる。また、装着すると車両の全幅が広がるので、路上での行動の自由が阻害される上、隙間があるとは言え装着した場所によっては車両から周囲への明瞭な視界を阻害するという問題もある。 ウィキメディア・コモンズには、ケージ装甲に関連するメディアがあります。
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