クローディンバインダーの臨床応用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 07:22 UTC 版)
「クローディン」の記事における「クローディンバインダーの臨床応用」の解説
クローディンバインダーは悪性腫瘍の治療薬、吸収促進薬、炎症性腸疾患治療薬、ワクチン開発、C型肝炎治療薬としての応用が期待されている。 悪性腫瘍の治療薬 クローディンのいくつかのタイプは一部の悪性腫瘍において発現が変化することが知られている。異所的に発現したクローディンを目印として診断や治療に応用する取り組みが行われている。例えば、CPEが膵臓癌に対して抗腫瘍活性を示すことからクローディンを標的とした悪性腫瘍の治療が提唱されている。また毒性を持たないC-CPEはがん診断プローブとしても利用することができる可能性がある。クローディン18アイソフォーム2に対する抗体IMAB362は胃がんに対して臨床試験が行われている。 吸収促進薬 CPEのC末端の184-319であるC-CPE184-319はクローディン-3、クローディン-4に作用することが報告されていた。C-CPE184-319は上皮細胞へ作用させると細胞障害性を伴うことなくタイトジャンクションのバリア機能を阻害するため、吸収促進薬として応用可能な可能性があった。昭和薬科大学の近藤、渡辺らはC-CPE184-319がラットの空腸を用いたin site loop assayで分子量4000のデキストラン(FD-4)の吸収促進効果があることを明らかにした。中鎖脂肪酸のカプリン酸(C10)の400倍も効果が認められた。C-CPE184-319の作用は分子量20000を超えると著しく低下した。タイトジャンクションの間隙は0.5nm程度であり、カプリン酸の投与で1.5nmまで開口する。C-CPE184-319投与では2nm程度開口すると推定された。この研究によりクローディンバインダーを利用した吸収促進の概念実証(proof of concept)が確立した。 さらに2007年にAndersonのグループがC-CPE194-319というC-CPE184-319のN末10アミノ酸欠損体を作成した。C-CPE194-319は高い溶解度を示し構造解析が可能であった。大阪大学の近藤、八木らはC-CPE194-319が高い溶解度だけではなくクローディン4への結合、TJストランド消失能力を保持していることを明らかにした。C-CPE194-319を用いてバイオ医薬を非侵襲的に投与できる概念実証を確立した。さらに彼らはクローディン1、2、4、5に結合するC-CPEの変異体であるm19を開発した。protzeらはクローディン5のみに結合する変異体である C-CPE Y306W/S313Hを開発した。C-CPE Y306W/S313HはS313Hの変異によってC-CPE感受性のないクローディン1やクローディン5のECS2とC-CPEの結合ポケットの相互作用が可能になり、結合性が高まる。さらにY306Wの変異が加わるとC-CPEの結合ポケットが小さくなりクローディン5への特異性が高まると考えられる。C-CPE Y306W/S313Hは血液脳関門を通過させる吸収促進薬となる可能性がある。C-CPE Y306W/S313HはゼブラフィッシュではBBB透過性を亢進させるという報告がある。 また大阪大学の近藤らは愛媛大学の竹田らとの共同研究でクローディン5に対する抗体を作成した。この抗体が血液脳関門の脳微小血管内皮細胞の密着結合を制御して中枢神経系への薬物送達を可能にする可能性がある。 C型肝炎治療薬 クローディン1はHCVの感染受容体である。抗クローディン1抗体はHCV感染を阻害する。
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