クラシック音楽における即興演奏の例
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 19:56 UTC 版)
「即興演奏」の記事における「クラシック音楽における即興演奏の例」の解説
一例として、アメリカの音楽学者兼ピアニストのロバート・レヴィン(en)は、モーツァルトやベートーヴェン等の楽曲のカデンツァを、作曲当時のスタイルに従って完全に即興し、楽譜には残さない。インタビューで語ったところでは、事前には何も準備していないという。したがって、その時々の演奏で何が出てくるのかは本人にも全くわからず、その演奏を繰り返し聴けるのは録音やCDのみということになる。自由即興の例ではトルコのファジル・サイがピアノ協奏曲のアンコールなどで見せてくれ、彼はもちろん協奏曲の際のカデンツァでも様式にあった即興を披露している。 古くはアンドレ・プレヴィンが、そうした形でモーツァルトのピアノ協奏曲を弾き振りしたCDを残している。またフリードリヒ・グルダはモーツァルトのピアノソナタの中で、提示部の繰り返しと展開部、再現部の繰り返しにバッハ的な装飾音を用いて変奏即興している。 ヴァイオリンとピアノのユリア・フィッシャーやピアノのマルティン・シュタットフェルト(en)のように、カデンツァを自作する演奏家も欧米にはたくさんいる。他にはナイジェル・ケネディ、マクシム・ヴェンゲーロフ、ヒラリー・ハーン、ジョセフ・リン、日本人では児玉麻里、庄司紗矢香なども自作カデンツァを演奏している。しかしこれらの場合、カデンツァの大枠は事前に決められていて、即興は部分的なものに留まる。 ヴァイオリンのヨーゼフ・ヨアヒムなど高名な演奏家によるカデンツァが楽譜に残されると他の演奏家もそれを使う傾向があり、そうなるともはや完全な即興演奏とは言い難いものになる。スヴャトスラフ・リヒテルは、カデンツァで何もせずいきなり最後のトリルに入るという「即興」をしてしまい、「即興カデンツァの本来の形の一つだ」と新聞で絶賛されたこともある。 近年ではアルフレート・ブレンデルが有名である。普段から単純な旋律でも即興的に装飾音や音階・分散和音などを入れる。カデンツァで長く即興しすぎて調性が完全に変わってしまい、元の調に戻れなかったという逸話もある。 ヴィルヘルム・バックハウスのライブ録音では、指慣らし風に分散和音等のメロディーを弾いてから次曲を弾き始めることがある。 セルゲイ・ラフマニノフには、編曲はしていない原曲を、大胆に変えた録音が多く残っている。
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